自分だけのもの

以前、認知症の利用者さんで「足が痛い」と訴える人がいた。
「足をくじいてから痛くて歩けないの」
けれど足をくじいたのは半年も前。
とっくに完治している。
検査をしても悪いところはない。
認知症のせいで治ったことが理解できないのか、『痛い』ことが頭に残ってしまって離れないのか、心の問題だろうと思われた。痛みへのこだわりというわけだ。
「病は気から」
「話題にしなければ忘れるよ」
みんながそう思っていたし、まったくそのとおりなんだけれど。
私は少し気の毒に思った。
こんなに痛がっているのに、誰にもわかってもらえない。
信じてもらえないのだから。

痛みや苦しみはその人だけのものだ。
どれくらい苦しいかなんて、誰とも分かち合えないし、わかってもらえない。
現在、母は脳卒中の後遺症で足に痛みが出ているが、それだって確たる証拠はないから
「痛い！」
と言われても私は「そうなんか」としか言えない。申し訳ない。
訪問の先生が痛み止めを増やしてくれた。
効くことを祈るばかりだ。

一方で
「どうして私はこんなに不幸なんだろう」
と言う人がいる。
「他の人はみーんな幸せに暮らしてるのに、私だけ！どうして私だけこんなに不幸なんだろう！」
そりゃあ、他の人と比べるからじゃないですかね？
・・・と言いたかったが、刺激しないで伝える言葉が見つからなかった。

苦労や痛みが自分だけのものであるように、幸せもまた、自分だけのものだと思う。
他人の苦しみを本当には理解できないのと同じように、他人が本当に幸せかどうかなんて、わかるわけがない。
だから比べても仕方がない。
他の人はどうでもいい。
幸せかどうかは、自分自身で決めることではないだろうか。

鶏胸肉をがっつくサンジ

サンジがたくさん食べてくれたから。
今日の私は幸せです！
鶏胸肉が気に入ったようです。