今日は、一人のおばあちゃんの話をする。彼女は驚くほど強い人で、いつも闘っていた。病気と闘い、だんだん動かなくなる手足と闘い、環境と闘い、年齢と闘っていた。毎日数十分がかりで自らオムツを交換していた。頭はしっかりしているのだけれど、病気がすすんで身体が不自由になり、施設を自分で探して決めた。そんな人が、ゆっくり話せるのももう最後だからと改まって話をしてくれた。
「人間ちゅうのは、体が動かんようになるとガックリきて、もうアカンなあて思うもんや。そんな時に施設へ行くと、どこもかしこも人手不足やから『じっとしといて下さい』て言われるねん。勝手にうろうろされると危ないて思わはるんやろな。『そこでじっとしといて下さい!』って言いよる。
そうなると本当にアカン。呆けるしかないわな。しゃあないやん、じっとてろ言われるし、やることが何も無いんやもの。正気ではおられへんよ。呆けるよりほかに道はないの! あんた施設行って見たことあるか? みんな同じ顔になってしまう。老いに負けてしまうんや。
だからな、私は趣味(手芸)を諦めんことにした。趣味をやらせてくれる施設を探して選んだ。病気で手ぇもよう動かれへんし、動いたらしんどいし、『しょうもないモン作ったってしゃあない』て言うて大抵の人はやめてしまいはるんやけどな。しょうもなくても良いの。下手でもゴミみたいのでもいいの。何かをすることが、作り続けることが大切なの。生き続けるために必要なことなの。私は負けたくないの!」
鋼のような意志をもち、目をきらきらさせて、前へ前へと進みつづけるおばあちゃんの話に私は聞き入った。
「あんたはお母さんの介護してはるんやろ。そしたらな、お母さんの趣味を大切にしてあげなさい。本を読むのでもいい。本読んでたら、何歳でもヒロインになれて、大恋愛もできるから。コーラスでもいい。歌を歌ってるあいだは、振り返って悲しむヒマもあらへんやろ。何があっても忘れられるやろ。」
ごはん食べて薬のんでオムツ替えて寝るばかりの人生になってはいけない。老いて尚、どう闘うべきなのか、おばあちゃんは介護者である私に教えてくれたのだ。生きることは何かを為すこと。他人からはどう見えようとも、それが生きる証だと。
「自分が自分でありつづけるために」
あんた自身も趣味を大事にしなさいと、おばあちゃんは最後に言った。長いお付き合いではなかったのだけれど、私は彼女の青い炎のような言葉を一生忘れないだろうと思う。もう会えないかもしれないけれど、おばあちゃんの健闘を心から祈り、幸せを願う。
・・・あ、来週も会うんだったわ。
本日の猫写真。
酔っ払いオヤジが隠したスルメを発見したシシィさん。めっちゃ嬉しそう。
コメント
めっちゃええ話やのに、なんやそのオチは~!!(笑)
関西人のツトメとして、ツッコましてもらいましたよおおおお。
改めて だださん、こんばんは~
うちの父も何かええ趣味見つかったらいいいんですけどねえ
今までの趣味は釣りと日曜大工だったからなぁ・・
日曜大工が趣味だったおかげで、前もって勝手口に組み立て式のスロープを作ってたんで、退院前に何度も外泊できたんですけどね。
はーい、ツッコミありがとうございます(笑)。
お見送りはできないので、いつお別れになるかちょっと分からなかったんですよねー。
釣りと日曜大工ですか。
男性的でいいですね。
しかもスロープをご自分で作っていらしたとは凄い。
何か楽しいことが見つかりますように…!
お久しぶりです 熊本のるるです 昨年は震度七の地震で生活が変わってしまいましたが 今はみなし仮設のアパート暮らしになりましたが 手作りもできるようになりまし 委託店も仮店舗と元店舗と営業が始まります
このおばあちゃんのお話はすごく解りますね~好きなことできないなら頭も身体も退化するだけだし 昔の方たちは今みたいに施設等ないから自宅で何かしらの仕事がありましたからね 余りボケていく事も無かったなぁ~
良い話をありがとう😉👍🎶私も手仕事は続けていく事は自分の為にも子供達の為にも 良いんだと実感しています いつもブログ読んでいますよ🎵昨年はウィーン行きできてホントに良かったですね お母さんもお元気そうでなによりです
おおおおお!るるさん!
ご無沙汰してすみません!
震災の後どうされていたかと、お見舞いを送りたかったのですが、申し訳ないことにアドレスが分からなくっていて…ずっと気になってたんです。ご無事でよかった。
また手作りをできるようになったとのこと、安心しました。
物を作りあげる達成感が自分自身の励みになるのだと、そのおばあちゃんは言っていました。
るるさんの手作り品はとても温かいので、熊本の皆さんに喜ばれていることでしょう。
お体お大事にがんばってくださいね。