アレックス・シアラー: ミッシング

行方不明になった親友を探す少年の物語。

アレックス・シアラーで金原瑞人訳、というだけで手にとった。

主人公は孤独な少年。たった一人の友達・ジョナが行方不明になり、誰もがジョナは死んだのだと諦めても、彼は親友を捜し続けた。きっとどこかで生きていると信じて。

終盤の展開が早くておもしろかったけど、ミステリーというよりは親友を捜し求める少年の心を描いた作品。

辻村 深月: ぼくのメジャースプーン

ふしぎな力をもつ「ぼく」はウサギを殺した男にどのような復讐を下すのか。

復讐とは何か、という話。小学生が語り手だというからもう少し軽い感じかと思ったら…。
なかなか読み進まないところもあったのだけど、最後の最後に
「おおっ」
となって一気に目が覚めた。これちょっとすごい。
続きを読む →

塩田 武士: 罪の声

グリコ森永事件で脅迫状をよみあげた子供の立場から、事件の真相を追及する。

よくできていて面白かった。古い事件なのにものすごく調べてあるので、どこまでが真実でどこからがフィクションなのか気になってしまうくらい。私も主人公や作者とほぼ同年代(脅迫事件のとき子供だった)。実際に脅迫状をよんだ子供(女性?)はいたわけだし、犯人たちはどうなったんだろうなあ。

佐藤愛子: 九十歳。何がめでたい

90才を超えた小説家・佐藤愛子のエッセイ。

斬新なことが書かれているわけではないけれど、さすがの文章でユーモラスに読ませる。ズバズバと言いたいことを言う毒舌で、年配の読者は「そうそう!」「そうなのよ!」「よく言った」と思いながら読む・・・らしい。

正直、私は「昔はよかった」「今の若者は」という話がだいぶ苦手。ただ、老いるということはどういうことなのか、感じ方や考え方になるほどなあとと思いながら読んだ。

後半はかなり読みやすくなり、イタズラ電話やしつこいリサイクルショップを撃退する話などとてもおもしろかった。

真保 裕一: 黄金の島

海外逃亡したヤクザとベトナムの貧しい若者たちが、黄金の島ニッポンを目指す。

宝探しか何かの話かと思ったら日本を目指すボートピープルの話だった。アクションあり、裏切りあり、友情ありで、飽きさせず一気に読ませ、読み応えのある物語だった。

サイゴン、ダナン、ホイアンなど懐かしい街が舞台になっているのも興味深かった。ベトナムの人たちは本当によく働く。早朝からいくつも仕事をかけもちしていたおばちゃんを思い出した。

ただ、出てくる女性たちがみんな、逞しいというより嫌な感じ…。

続きを読む →

高田 郁: 八朔の雪 みをつくし料理帖

江戸時代、料理人の女の子の話。

主人公は大阪うまれの女の子・澪。事情あって江戸へ出てきて蕎麦屋「つる家」で働き始めるが、上方と江戸とは味の好みがまったく違う。若いが根性のある澪が、まわりの人に助けられながら、苦労と工夫を重ねてアイデア勝負の料理をこしらえる話。

ミステリばっかり読んでいたら、殺したり殺されたりするのにウンザリして、人が死なない話を読みたいなあと思って借りてきた。でもこんどはあまりにものんびりしているように感じられて、ちょっと退屈だなあと思いながら読んだ・・・のだが! すごい良かった! 和食が食べたくなった。シリーズものなので続きも近いうちに読もうと思う。

深緑 野分: 戦場のコックたち

第二次大戦時、ヨーロッパで戦ったアメリカ兵のコックたちの話。

主人公は若きアメリカ兵のキッド。戦いながらコックの仕事もする特技兵だ。1944年、彼はパラシュードでノルマンディーに上陸する。戦いと日常的な謎解きが交互に描かれ、最初はのんびりとしたものだったが、戦闘は激化、次々と仲間を失っていく・・・。

途中まで普通に翻訳ものだと思って読んでたので、作者が日本人がだと知ってびっくり。しかも女性だと知って尚びっくり。でも良い本だった。

島田荘司 :写楽 閉じた国の幻

息子を亡くしてどん底まで落ちた主人公が、写楽の正体を解き明かそうとする。

まずは素直に、おもしろかった。
一人息子が事故で死んで絶望のどん底に落とされる前半、写楽は誰かを延々と考えたり調べたり討論したりを繰り返す後半、そしてたまに挿入される「江戸編」。写楽についての講義が長くてちょっと眠くなったりもしたけれど、難しくはないのでほぼノンストップで読むことができた。へえーすごいなー、おもしろいなーって感心して読んだ。

ただ、主人公がとにかくダメダメだ。奥さんばっかり悪者にしてんじゃねーよ! なんでもかんでも運が悪いとか人のせいにするな!と読みながらイライラしてしまった。子供が本当に可哀想。

それに伏線がほったらかしのまま終了しているのにもちょっと笑えた。「写楽の正体は突き止めたんだから、まあいっか」って感じなのだ。読んでる私も「そうだね、まあいっか」と丸め込まれてしまった。たぶん、長くて読み疲れたのだと思う。

続きを読む →

熊谷 達也:邂逅の森

マタギってすごい。

大正時代、雪深い秋田の山でクマを狩るマタギとして生まれた男の人生。話し言葉も方言だし、人と山とのかかわりが重厚に語られるのかと覚悟したけど、文章はとても読みやすかった。主人公が山へ引き寄せられるように、ぐいぐいと物語に惹きつけられていく。

「マタギの体は、半分は親から、残りの半分は山から貰ったもの」
「人間ってのは、お天道様と一緒に生きていくべき生き物だって、俺ぁ思うんだ」

奥さんや初恋の人とのこと、鉱山の男の世界なども出てくるが、やはり最後のクマ狩りはものすごい迫力で恐ろしかった。