辻村 深月: ぼくのメジャースプーン

ふしぎな力をもつ「ぼく」はウサギを殺した男にどのような復讐を下すのか。

復讐とは何か、という話。小学生が語り手だというからもう少し軽い感じかと思ったら…。
なかなか読み進まないところもあったのだけど、最後の最後に
「おおっ」
となって一気に目が覚めた。これちょっとすごい。
続きを読む →

塩田 武士: 罪の声

グリコ森永事件で脅迫状をよみあげた子供の立場から、事件の真相を追及する。

よくできていて面白かった。古い事件なのにものすごく調べてあるので、どこまでが真実でどこからがフィクションなのか気になってしまうくらい。私も主人公や作者とほぼ同年代(脅迫事件のとき子供だった)。実際に脅迫状をよんだ子供(女性?)はいたわけだし、犯人たちはどうなったんだろうなあ。

佐藤愛子: 九十歳。何がめでたい

90才を超えた小説家・佐藤愛子のエッセイ。

斬新なことが書かれているわけではないけれど、さすがの文章でユーモラスに読ませる。ズバズバと言いたいことを言う毒舌で、年配の読者は「そうそう!」「そうなのよ!」「よく言った」と思いながら読む・・・らしい。

正直、私は「昔はよかった」「今の若者は」という話がだいぶ苦手。ただ、老いるということはどういうことなのか、感じ方や考え方になるほどなあとと思いながら読んだ。

後半はかなり読みやすくなり、イタズラ電話やしつこいリサイクルショップを撃退する話などとてもおもしろかった。

真保 裕一: 黄金の島

海外逃亡したヤクザとベトナムの貧しい若者たちが、黄金の島ニッポンを目指す。

宝探しか何かの話かと思ったら日本を目指すボートピープルの話だった。アクションあり、裏切りあり、友情ありで、飽きさせず一気に読ませ、読み応えのある物語だった。

サイゴン、ダナン、ホイアンなど懐かしい街が舞台になっているのも興味深かった。ベトナムの人たちは本当によく働く。早朝からいくつも仕事をかけもちしていたおばちゃんを思い出した。

ただ、出てくる女性たちがみんな、逞しいというより嫌な感じ…。

続きを読む →

高田 郁: 八朔の雪 みをつくし料理帖

江戸時代、料理人の女の子の話。

主人公は大阪うまれの女の子・澪。事情あって江戸へ出てきて蕎麦屋「つる家」で働き始めるが、上方と江戸とは味の好みがまったく違う。若いが根性のある澪が、まわりの人に助けられながら、苦労と工夫を重ねてアイデア勝負の料理をこしらえる話。

ミステリばっかり読んでいたら、殺したり殺されたりするのにウンザリして、人が死なない話を読みたいなあと思って借りてきた。でもこんどはあまりにものんびりしているように感じられて、ちょっと退屈だなあと思いながら読んだ・・・のだが! すごい良かった! 和食が食べたくなった。シリーズものなので続きも近いうちに読もうと思う。

深緑 野分: 戦場のコックたち

第二次大戦時、ヨーロッパで戦ったアメリカ兵のコックたちの話。

主人公は若きアメリカ兵のキッド。戦いながらコックの仕事もする特技兵だ。1944年、彼はパラシュードでノルマンディーに上陸する。戦いと日常的な謎解きが交互に描かれ、最初はのんびりとしたものだったが、戦闘は激化、次々と仲間を失っていく・・・。

途中まで普通に翻訳ものだと思って読んでたので、作者が日本人がだと知ってびっくり。しかも女性だと知って尚びっくり。でも良い本だった。

島田荘司 :写楽 閉じた国の幻

息子を亡くしてどん底まで落ちた主人公が、写楽の正体を解き明かそうとする。

まずは素直に、おもしろかった。
一人息子が事故で死んで絶望のどん底に落とされる前半、写楽は誰かを延々と考えたり調べたり討論したりを繰り返す後半、そしてたまに挿入される「江戸編」。写楽についての講義が長くてちょっと眠くなったりもしたけれど、難しくはないのでほぼノンストップで読むことができた。へえーすごいなー、おもしろいなーって感心して読んだ。

ただ、主人公がとにかくダメダメだ。奥さんばっかり悪者にしてんじゃねーよ! なんでもかんでも運が悪いとか人のせいにするな!と読みながらイライラしてしまった。子供が本当に可哀想。

それに伏線がほったらかしのまま終了しているのにもちょっと笑えた。「写楽の正体は突き止めたんだから、まあいっか」って感じなのだ。読んでる私も「そうだね、まあいっか」と丸め込まれてしまった。たぶん、長くて読み疲れたのだと思う。

続きを読む →

熊谷 達也:邂逅の森

マタギってすごい。

大正時代、雪深い秋田の山でクマを狩るマタギとして生まれた男の人生。話し言葉も方言だし、人と山とのかかわりが重厚に語られるのかと覚悟したけど、文章はとても読みやすかった。主人公が山へ引き寄せられるように、ぐいぐいと物語に惹きつけられていく。

「マタギの体は、半分は親から、残りの半分は山から貰ったもの」
「人間ってのは、お天道様と一緒に生きていくべき生き物だって、俺ぁ思うんだ」

奥さんや初恋の人とのこと、鉱山の男の世界なども出てくるが、やはり最後のクマ狩りはものすごい迫力で恐ろしかった。

ダイアナ・ウィン ジョーンズ: 九年目の魔法

母が村上春樹の長編小説を買ってきた日、「私はもっとわかりやすい本を読もう!」 と読みはじめたんだけど・・・これもわかりにくかったわ!

いや、ずっと分からなかったわけじゃない。むしろ、すっごくおもしろかったのだ。

あるとき突然、記憶が2つあることに気づいたポーリィ。失われた記憶をたぐり寄せ、大事な人のことを思いだす。チェロ奏者のリンさんだ。奇妙な屋敷の葬式で出会い、両親の離婚に動揺するポーリィの良き理解者になってくれた。そして2人で「英雄ごっこ」をして想像の翼をひろげていたら、想像したことがどんどん現実になっていく…。女の子の成長とラブロマンスの物語。

「楽しいな、楽しいな、楽しいな」って夢中で読んでたのに、最終章でいきなりドーン! と突き放されて「わけわからーん!」と叫んでるうちに物語が終わってしまった。推理小説に例えるなら、ぐいぐい読ませておいて犯人が捕まったのはわかったけど、殺人の動機もトリックも理解できなかった、みたいな。ミステリアス!

まあ、私が阿呆なせいなんだろうけどね。最終章がやたら難解なのだ。種明かし的な説明はほとんどなくて「本好きの人なら言わないでもわかるでしょう?」という雰囲気につつまれる。本好きの人の中には「これ、わかんねえよ」 と大きな声では言えない人もいるかもしれない。

というのも。作品中にはたくさんの本が登場する。『三銃士』『宇宙戦争』『トムは真夜中の森で』『指輪物語』『金枝篇』などなど。私も半分くらいは読んだけど、問題は数じゃない。この物語をおもしろく読めるかどうかは、核心である2冊の本『詩人トーマス』『タム・リン』を知っているかどうかに掛かっている。

あとがきによれば、『詩人トーマス』と『タム・リン』はイギリス人なら誰もが知っている童話、日本でいうなら『桃太郎』あたりに位置する話らしい。だから作者はあえて細かな説明をしていない。たとえば携帯会社のCMに桃太郎が出てきたら、きび団子に何の意味があるのか、犬猿雉はどんなキャラか、日本人なら見ればすぐに分かるように、『九年目の魔法』を読むイギリス人には『詩人トーマス』と『タム・リン』の説明はいらないのだ。ただただ私が知らんだけ…。どれくらいの日本人が知ってるのかなあ…。

わからなかった言いわけで終了。

赤川次郎: 鼠、江戸を疾る

気楽な本が読みたくて、ひさしぶりに赤川次郎を手に取った。赤川次郎は子供の頃に読んだ『三毛猫ホームズ』が好きだった。名探偵の三毛猫の反対側にいるのがこの鼠小僧のシリーズなんだろうか。小粋でシャイな鼠だけど、気の強い妹が出てくるところはよく似ている。さらさらっと読めて楽しかった。