寿命が縮んだ

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昨日、確定申告の準備がぜんぜんできなかったオヤジ。ある程度は私がやったけれど結局、よくわらない部分があるので、会場の相談員さんに教えてもらうことになった。

朝、仕事の前に申告会場へオヤジを連れていく。
ひとりで大丈夫?
「大丈夫!毎年やってるから!」
自信満々のオヤジ。
・・・ちょっと待って!
何そのビニール袋!?
「何って、申告書類とかハンコとかマイナンバー(の通知書)とかだよ」
貴重品をスーパーの袋に入れて持ち歩くのやめてー! 絶対に失くすから! ああ、そっちの、お財布とか入ってる鞄に入れておこうよ。
私は貴重品をビニール袋から茶色い鞄に移し替えた。
肩掛け鞄なら失くさないでしょ?大事なものだからこの鞄は肌身はなさず持っててね。
「うん、わかった」
オヤジは素直にうなずいた。
「帰りはバスで帰るから大丈夫!」

夕方。オヤジのほうが先に帰宅していた。ちゃんとバスで帰ってこれたのだとホッとした。
首尾はときくと
「ちゃんと申告できたよ!」
満足げである。
よかったよかった。
問題なかく終わったんだなあ。
昨日はしょんぼりしていたけれど、これで一つ自信を取り戻せたんじゃないだろうか。

そう、思っていたら!
残念ながら!
誰よりも先に夕飯を食べ終えたオヤジが、突如、ぶっちゃけてきた。
「カバンを、失くしました!」
・・・ぎょええええええ!
あの、肩掛け鞄を!?
貴重品が入ってる鞄を!?
失くしたの?
「そう!」
そう、じゃねえよ!
なぜ、ビニール袋だけ持って帰ってきたのか!
なぜ、帰宅してすぐに言わないんだーーーー!

どこで失くしたのかははっきりしている。確定申告の会場だ。
もう、5時間も前のこと。
もう、無い可能性が高い。
このとき私は真っ青な顔をしていたと思うし、寿命は確実に3年くらい縮んだと思う。だが、そんなこと考えてる場合じゃない。

とにもかくにも探さねば” 私はまだ夕飯の途中だったがお箸を放り出してスマホをつかみ、申告会場に電話をかけた。もしもし、茶色の肩掛け鞄をそちらで落としたのですが。
「茶色のショルダーバッグですね」
なぜか言い直された。高齢者とばかり付き合っているのでカタカナを忘れている自分を思い知らされる。いや、そんなことはどうでもいい。茶色のショルダーバッグ届いてますか?
「届いてますよ!」
天使の声が告げた。

・・・今すぐ取りに伺いますので!
電話を切ると、まだご飯途中だった母をベッドにつれていき(一人で食事させるのは危ないから)オヤジを車に乗せて申告会場へと走った。

失くしたのは、もう5時間も前のこと。
もう、悪いことに使われた後かもしれない。
カバンが空っぽだったら警察へ行かねばならない。

鞄の中身、覚えてる?
車の中でオヤジに尋ねたら、
「ええと」
黙った。
まったく覚えてないのである。
私が見たのは、ハンコと、マイナンバーの通知書。それから財布。
「免許証!」
思い出したことが得意そうに言った。
「それから銀行の通帳!」
・・・だんだん吐きそうになってきた。
ハンコと免許証とマイナンバーと預金通帳があったら、いくらでも借金ができそうである。

悪い想像でムカムカしながら会場へ駆けつけた。事務所へとびこみ、先程お電話をした者ですが、茶色のショルダーバッグ、と言うと、
「はい、これですか?」
係のお姉さんが天使みたいに微笑んで茶色の肩掛け鞄をとりだしてきた。
「中身をご確認ください」
言われるまでもなくカバンに食らいついて開けた。

ハンコは?マイナンバーカードは?免許証は?通帳は?
ある!
ぜんぶあるよ!
神様ありがとう!
「お財布の中身もご確認くださいね」
と天使がいう。
「ある!」
とオヤジがいう。
あるといえるほどの額は入っていないのだが、抜かれてはいないようだ。
「よかったですねー!」

係の人いわく、座ってた席にそのまま置いてあったそうだ。知らないうちに闇金でローンを組まされていないという保証はないが、多分、大丈夫・・・じゃないかな?まわりが善良な人ばかりだったことを信じるしかない。

引いた血の気が戻り、縮んだ寿命がもとどおり伸びた。
さて、次は対策を考えなくてはいけない。
ハンコやマイナンバーを持たせたのは私のミスだ。オヤジにはもう貴重品を持たせてはいけない。銀行の預金通帳も、もちろん。

オヤジは退職してからずっと通帳を持ち歩いていた。大事なお小遣いを入れているのだろう。今まで触らせてくれなかったし、私もオヤジのポケットマネーだからあえて触れようとしてこなかった。
だがもう、ダメだ。
・・・通帳、私が預かってもいい?
尋ねると、オヤジはしばらく黙っていたが
「わかった」
ようやく頷いた。
「ほとんど入ってへんけどな」
・・・ほんまに入ってないな!やばいなこの通帳!小学生より貯金ないな!
確定申告の還付金はちゃんと渡すから。
頑張ったんやもんな。

そういえばオヤジ、財布もないのにどうやって帰ってきたの?
「歩いて帰ってきた」
歩いて!
また!?
また5キロ歩いたの?
まあ、いい運動やけどな・・・。

本日の猫写真。

天井を見上げるサンジ君。

「何してるの!? あたしもー!」
突撃してくるシシィさん。
ここ、階段の手すりなんだよね・・・
やめたほうがいいと思うよ・・・