利用者さんの昔話に聞き惚れる

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高齢者が寝たきりになる原因の一つが転倒だ。転んで骨折して入院して動けなくなる。本当によくある話。

だが、しばしば転倒しているにもかかわらず無傷な人がいる。何回転んでも平気。90才オーバーと高齢だし病気もあるし腰痛もちだし、よぼよぼと動くことしかできない人なのに。どうしてケガをしないのか?

「自然に受け身になるみたいだな」
と教えてくれた。
「昔、いじめっ子から身を護るために柔道を習っていたんだよ。倒れるときは、手をついたり膝をついたりせず、無意識に背中で落ちるから、ケガをしないんだと思う」
・・・老後といじめっ子に備えて、子供は全員、受け身を習うべきかもしれない。

そのあと、

「いじめっ子が持っていたドスを手で叩き折ろうとしたら、当然だけど手を切っちゃって。血がでたもんだから相手が真っ青になって逃げていき、結果的にぼくが勝ちました」

という武勇伝を聞かせてもらってるうちに仕事の終了時間を過ぎてしまった。いや夏目漱石の『坊っちゃん』かよ。

シシィのおおあくび

私にとって介護職の楽しみの一つは、昔話を聞くことだ。利用者さんの昔話を聞くのが大好きなのだ。
戦争中の子供時代の話。
満州の話。
汽車や馬車の話。
なんでも手作りしたという苦労話。
それからもちろん恋の話も。

普段は愚痴ばかり言ってる方でも、若い頃の話をせがんだら急にキラキラして、言葉もいきいきと輝きに満ちて、明るい顔で話してくれる。

もちろん何度も何度も同じ話をされるけど、そのたびに違う質問を挟み、ちょっとずつ違う話を聞き出していけば、下手なドラマや小説なんかよりよっぽどおもしろい物語を聞くことができる。

ある女性の利用者さんは
「私、学生時代は不良って呼ばれてたの」
と、こっそり教えてくれた。
入浴介助中に教えてくれたんだけど、話がおもしろすぎて、あやうくのぼせるところだった。あぶないあぶない。