音楽の力

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音楽には不思議な生命力がある。人間は脳が傷つくと歩けなくなったり見えなくなったりさまざまな能力が失われるものだが、なぜか音楽だけは残ることがあるのだ。

たとえば重い失語症で、ほとんど喋ることができないのに歌は歌える、ということがある。たとえば重い記憶障害で、新しいことは何ひとつ覚えられないのに、歌詞だけは覚えられる、ということがある。

認知症の方もそうだ。自分の家もわからない。家族の顔もわからない。文字の書き方も昔のことも何もかも忘れてしまった。思い出せないことに不安を抱えているので、あまり質問はしてはいけない・・そういう方と、車に乗っていたときのこと。
ラジオで古い歌謡曲がながれたので、私はつい、
「この歌はなんていう曲なんでしょうね?」
と尋ねてしまった。
すると利用者さんは
「これは『くちなしの花』よ」
と即座に答えたのだ。
答えがスルリとすべり出た。
その方が質問に答えられるのはほとんど初めて見たので、私はとても驚いた。
「すごーい、よく知ってるねえ!」
「曲の名前なんてよく覚えてたねえ」
他の利用者さんたちにほめられて、その方はとても得意そうで幸せそうだった。

そういえばうちの母も、かつて妄想ばかりみて頭の中がぐっちゃぐちゃだった頃、同じようなことがあった。家族の顔さえ見分けられないのに、音楽の聞き分けだけはできていたのだ。ウエストサイド物語の『Tonight』を英語で歌いだして看護師さんを驚かせたものだ。

何もかも忘れてしまっても。
脳みそとは別のところで覚えている。
私が私である証拠。
それが歌だ。
それが音楽だ。

もしも私の脳が傷ついて、何もかも忘れてしまったとき、歌いだす音楽はなんだろう?
脳とは別のところで覚えている曲。
私に根っこに流れている音楽。
・・・うん・・・間違いなくタカラヅカだな・・・。
きっと「我が名はオスカル」とか一人で勝手に歌い出すんだろうな・・・。

本日の猫写真。

クッションの上で爪をたてるシシィ

そういえばビーズクッションに穴が開いてたんだけど、誰の仕業だろう? ねえ、シシィ?

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