オヤジが臭い。
だいぶ臭い。
入院中は清拭のみだったから仕方がない。
昨日は5日ぶりの入浴をさせた。
が、
「絶対やだ!」
と私には介助させてくれない。まあ、実の娘に入浴介助なんかしてほしくないだろう。しかたなく浴室の外で耳をそば立てて待機していたが、数十分も湯船から出てこないのでハラハラした。
「大丈夫?」
「大丈夫!」
何度も声をかけて無事を確認しながら。
「身体は洗った?」
「あらった!」
ウソである。そんな水音ぜんぜん聞こえてこない。まあ、今はまだ体がしんどいのだろう。それでも「ちゃんとシャワーで髪をあらってね」というと
「シャワー?」
それなに?
みたいな返事がかえってきたのにはびっくりした。
シャワーだよ。ジャーって流すやつ!
「え?・・・あ、シャワーか」
シャワーの存在を思い出すのに長いことかかり、使い方を思い出すのにはさらに時間がかかった。水音は一瞬だけ聞こえたが「わっ!」という声とともにすぐ止んだ。冷水だったのだろう。お湯の出し方はわからないみたいだった。
結局、オヤジは頭を洗うことができなかった。顔もちゃんと洗えていない。ヒゲもうまく剃れない。調べてみたら腕が上がらなくなっていた。
そこで今日は理容室に行くことにした。散髪ついでにシャワーとひげ剃りをしてもらえばいい。オヤジ行きつけの理容室は、私の足で徒歩5分。入院前のオヤジでも徒歩10分。そこまで歩いて行ってみよう。
たしかに病み上がりで体力はないけど、だからといって今、家で静養してしまえば廃用症候群(生活不活発病)が悪化の一途をたどるのは目に見えている。今は動くべき時だ。なんたってお出かけは最高のリハビリがウチの家訓だからな!
よっちら、よっちら、オヤジが歩く。
スピードは入院前と同じだけれど、あんまりまっすぐ歩けない。
ふら、ふら、ふら。
不安定である。
コケそうでコケない。
ふら、ふら、ふら。
私はオヤジの後ろを車椅子を押して歩いた(歩けなくなったときの保険)。
のぼり坂、クリア。
狭い道、クリア。
並木道、クリア。
下り坂、ちょっと危なっかしいけどクリア。
横断歩道・・・がんばってクリア!
15分くらいかかって理容室に着いた。
「ちゃんと来れたねえ、えらかったねえ」
ほめてあげた。
散髪とひげ剃りとシャンプーをしてもらったオヤジは、さっぱりして気分が良さそうだった。猫背がちょっと伸びている。心なしか足元もさっきより安定している。
・・・帰りも歩いてみる?
「うん、歩く」
オヤジはちゃんと無事に帰ってこれた。
すごくホッとした。
が、私が仕事から帰ったときオヤジはこんどは暖房器具の存在を忘れていて
「この部屋すごく寒いんだけど」
と寒さに震えていた。
・・・いろいろ、めんどうくさいな。
猫が世話してくれたらいいのに。
コメント
父と息子も難しいですよ。
実家父と弟、義父と自分の旦那くらいしか知らないですが(データ少な!)、
父は息子に弱いところは見せたくないし、そもそも普通の会話も親しく話してる割に、すぐ会話が途切れ、何か他人行儀で不自然。
自分が弱っていることを認めるのも至難の技だし、それを息子に伝えて手伝ってほしいと頼むのも大儀だし、だったら、口つぐんで我慢しちゃおうとなり、廃用症候群年寄りが出来上がるという寸法です。
家族だからかえって言えないこともあるようです。
言って貰った方が色々一緒に考えられるし、適切な方法に早く辿り着けるんですけどね。
男の人は難しい(笑)
おお、興味深いコメントありがとうございます。
私も利用者さんのことしかわからないですが、たしかに父子の対立というかプライドの張り合いみたいなとこはありますね。
なんで素直に言ってくれないのって思っちゃうんですよね。
そうか、弱いところを見せたくないのですか・・・それでガマンしちゃうんですか。
うちのオヤジは弱いところだらけなのに今更・・・(笑)。
本っ当に、男の人は困りますね!
認知症の母も入浴拒否が酷く2ヶ月位お風呂に入らない事がありました。
身体のあちこち掻きむしって、フケだらけになっても「汚れていない」「昨日入ったばっかりや」と拒否し続け、仕方なく週1で美容院にシャンプーだけ連れに行ったりしてました。
でも入らない事でますます入浴離れが酷くなり入り方がわからなくなってしまいました。
たださんのお父様と同じ様にお湯の出し方がわからず温度調整の方を触って悲鳴が聞こえたり、シャンプーして流した後にまたシャンプーとエンドレスになったりする事もしばしば…
2年前に特養に入所しましたがやっぱり拒否し続けて暴れたり職員さんに噛み付いたり…そんな事から4ヶ月後に退去勧告を受けました。
その時施設からは精神病院を勧められましたが精神病院で廃用になった父を見ていたのでそれだけは受け入れられず別の施設探しました。
今の施設は家族と一緒にいろんな方法を模索してくれます。
たまたま相性の良かった職員さんとなんとか入浴できた時、さっぱりして気分も上がり、笑顔一杯になった母をみて職員さん達も入れるようにもっと努力してくれました。
家族でなきゃ心を開けない事もあれば他人の方が上手くいく事もあると…
今も5回のうち4回は拒否してますが2人介助で服を脱がせる一時だけ母は怒りまくって辛い思いをさせてますが湯舟に浸かってしまえば別人のように穏やかになり、ここが痒いやら注文し始めて入浴後は機嫌良く鼻歌が聞こえてきます。
人それぞれでこれが正解かわかりませんがこれで何とか週3回入浴出来ています。職員さんは「まだまだです」と努力を惜しまずやってくれています。
お父様にも良い方法がみつかりますように。
おおお、なんと手強い入浴拒否。
大変なご苦労をされたのですね。
うちの祖父も1ヶ月2ヶ月入らない人で、たまに入ったらお湯がドロドロでえらいことに・・・。
認知症はなかったのですが、なんであそこまで嫌がるのか謎した。
お母様には良い施設さんが見つかってよかったですね。
週3回も入れるなんてすばらしい変化です。
>家族でなきゃ心を開けない事もあれば他人の方が上手くいく事もあると…
そうなんですね。
うちのオヤジにも介護保険が適用されればいいなあと思います・・・。