デイサービスの送迎時のできごと。
私は運転手として利用者さんをお宅までお連れしていた。
「さあ、Aさん家に到着で~す」
と車を降りたとき、足元を見たらシロツメクサが群れていた。
いや、あれはクローバーと呼ぶべきか。
四つ葉のクローバー。
「わあ、四つ葉です!幸運を見つけました!」
さっそく摘んで、Aさんにお見せした。
すると
「わあ、すごい、めずらしい」
とAさんが言葉を発した。
Aさんは認知症でほとんどの言葉を失っているから、それこそ珍しい!
「きれい、ですね」
とまで言ったのだ。
それで、この四つ葉はAさんが持っててください、とお渡しすると、顔をほころばせて
「ありがとうございます。でも、でも、これは、やっぱり・・・あなたが(持ってて)」
と言ってくださった。
すごいなあ。
Aさんがいっぱいしゃべってるよ!
しかも私に四つ葉をくれたよ!
Aさん優しいなあ!
幸運をありがとうございます、といって頂いてきた。
それを車の中から見ていた、利用者Bさん。
あとでこんなふうに話した。
「四つ葉って、珍しいよな。
めったにないよな。
とくに、探しまわってると、なかなか見つからん。
やけどさっきみたいに、別に探してもおらん時にかぎって、ひょっとした拍子に気がつくものや。
『ああ、こんな所にあった』って。
そういうものと、ちがうんかな」
幸せは、探しまわると見つからない。
見つけるものでも手に入れるものでもなく、気がつくものなんだ。
Bさんはそう教えてくれた。
・・・で。
デイに帰って
「今すごく文学的なことが起こりました」
興奮して先輩や上司に報告したら、
「Aさんがしゃべったのはすごいな!」
と喜んでもらえたのはそこだけで、あとは
「きっとその四つ葉、虫かんなんかついてたんやで」
「葉っぱもらっても困るもんな」
「Bさんも、そこまで深い意味はないと思う」
非常に現実的な評価を下された。
まあ、同感である。
ものごとは、人の見方で変わるもの。
雨あがりの水たまりを、通勤の邪魔だとみるか、きれいな風景だと見るか、人それぞれ。
近所の公園のただの水たまりでも、空をうつせばウユニ塩湖になるもんだ。
本日の猫写真。
悪さをしようと狙っているサンジ。
テーブル上の小物を全部はたき落とすのが今の彼の趣味です。
コメント
水たまりの空 の写真 ステキ
ありがとうございます!