青空のなんと美しいこと!

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このあいだ
「介護と仕事で忙しい日々の中、どうやって息抜きをしていますか?」
という質問を受けた。
ちょっと困った。
えーと。息抜き?
しばらく考えてから私は
「息抜きはデイサービスです」
と答えた。
「それ仕事やん」とツッコまれるかもしれないけど、デイの利用者さんたちは本当にみんな優しくて穏やかで、私を癒やしてくださるのだ。

たとえば認知症のAさん。近頃、急に弱ってきて、いろいろなことが分からなくなってきた。言葉数も極端に減ってしまった。

自分からはほとんど話さなくなったAさんだけど、帰りの車の中でときどき感嘆の声をあげる。
「ああ、緑がきれいねえ! それに青空のなんと美しいこと!」

Aさんと見上げた青空。雲の龍がのぼっていく。

Aさんにつられて見上げた空の青さにハッとする。

私はたくさんの国を旅してきた。自分の足で歩き自分の目で見ることで、この世界のことを学んだつもりだった。

でもそれと同じことを、デイの車にいながら教えてくれるのがAさんだ。たとえ病気になっても認知症になっても、あたりまえのことができなくなってしまっても・・・世界はこんなにも美しいのだと。たとえ体が動かなくても、たとえ記憶がどんどんこぼれ落ちても、目に染みる緑や空の青さに感動できる心に変わりはないのだと。

デイでつくった工作。水の中に色とりどりのアルミを入れて、逆さに振るとまるで万華鏡のようにキラキラ光る。これはAさんの作品。

また、素朴でかわいらしいBさんは、にこにこ笑顔でこんなことを言った。

「土曜と日曜はデイがないやろ。寂しいの。朝、カレンダーを見て、『今日はデイのある日や!』ってわかると『やったー!』って思うの。『デイに行ける!』って嬉しうなるの」

職員としてこんなに嬉しい言葉はなかった。

私はもともと介護の経験があるから介護士になった・・・わけじゃない。
逆である。

私は高齢者から学びたいと思って介護士になった。
それから私は、たくさんの人たちに助けてもらって生きてるから、少しでも恩返しができればと思って介護士になった。
少しでも。
少しずつでも。
これからも学んでいけますように。
恩返しができますように。

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