夕方6時。
仕事を終えて帰宅した私を、
「ニャニャー!」
盛大に迎えてくれたのは猫のシシィさんである。
「ニャンニャ、ニャンニャー!」
大きな声で鳴いている。
何かを切実に訴えているのだ。
・・・どうしたの?何かあった?
するとシシィは
「こっちこっち!」
と言うように、母の部屋にむかってダーッと走っていった。
・・・母に何かあったのだ。
後を追って母の部屋にいくと。
シシィが母の車椅子に、というか、母の頭にとびのるところだった。
「もう、シシィやめてよー」
「ニャンニャー!」
言い争っている。
状況はすぐにわかった。
母は一人でトイレに行こうとしたのだ。
車椅子を片手でこいで向きを変え、えっちらおっちら部屋の出口まできたところで、つっかえた。
ドアにぶち当たってしまった。
「出られないわねえ・・・」
車椅子で扉にガンガンぶつかっているのを見たシシィは
「大変だ!お母さんが危ないことしてる!」
猫なりの危機感をもって止めようとした。
母の頭にとびのったり、ニャーニャー鳴いて私に必死で訴えかけていたのは
「危ないよ!」
と叫んでいたのだ。
もちろん、すぐに母をトイレへ連れていった。
日中、シシィは母のそばで過ごすことが多い。
とくに私が仕事でいないとき、シシィはたいてい母といっしょにお留守番をしている。
だから私は
「シシィ、お母さんのこと、よろしくね」
と出掛けに頼んでいったのだ。
もちろんそんなの本気じゃなかったけど、案外、シシィは本当に母のことを気にして一緒にいてくれるのかもしれない。世話好きにゃんこだから。
「シシィ、すごかったよ。『私にできることある?何を手伝ったらいい?』ってニャーニャー聞いてくるの」
と母は嬉しそうに話した。
シシィはオヤジが鍋を焦がしたときも教えてくれたし、サンジの食事介助も手伝ってくれた。
ベッドの「ギャッジアップ」も理解している。
もはや立派な介護にゃんこであると言えよう。
でもさあ、シシィ、私がいない時はオヤジを呼んでもいいんだよ。
いつも隣の部屋でぼけーっとテレビ見てるんだから。
「お父さんは当てにならないからダメなんだって」
母はまた嬉しそうに笑った。
まあ・・・オヤジは猫語はわかってくれないだろうな。
シシィも苦労が多いな。
コメント
だださんこんにちは。
私は、椿ちゃんが幼い頃、トコトコ車が通る外へむかうのを、あじゃりちゃんが身を挺して止めたお話が忘れられません。
そのあじゃりちゃんがある日、だださん家に連れて帰って来たのが、サンジちゃんだったかと。だんだんおうちで暮らす事に馴染んで行ったサンジちゃんが、ずっと愛おしいです。
そしてシシィちゃんにも、あじゃりちゃんの心意気は脈々と生きて繋がっているんですね。(大切なだださんの猫ちゃん達を下手な言葉と記憶で語っちゃって、違ってたらごめんなさいです。)
覚えてくださってたのですか!
古い話を!
ありがとうございます。
嬉しいです。
アジャリは子守が上手でしたね。
死ぬときも子供の顔を見てから逝きました。
晩年のアジャリは半分くらい人間でしたが、シシィもいずれそうなる気がします。
サンジは・・・猫ですね・・・