75年間しまっていた話

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大正生まれのAさんに
「昔のお話を聞かせてください」
と頼んだときのことだ。
Aさんが
「こんな婆ぁの話なんか聞いてどうすんの」
と笑っておっしゃるので、私は
「今後は、戦争を知らない世代が、若い人たちに『戦争はいけないことだ』と教えなければいけません。そのために、実際の戦争を経験した方の口からどんなことが起こったのかをきちんと聞いて、知っておかなくてはいけないんです。だから教えてください」
とお伝えした。

Aさんは感慨深げにため息をついた。
「私なんか年とってしもうて、自分のこともようできへん。一人で風呂に入ることもできへん。歩くだけでも、ふんこら、ふんこら、言いよってのに、まあ。それでもまだ、ひと様のためにできることが、あるんかいなあ」

Aさんが聴かせてくださったのは、短い話だった。
空襲の話。
短くてシンプルでたったのワンシーン。
映像にすれば数十秒で終わってしまうだろう。
この季節になるとテレビや新聞にたくさん流れる、強烈な戦争体験の話に比べたら、戦争中はよくあることだと思われるかもしれない。

でもそれはご家族も知らない話だった。
ずっと胸の中にしまっていた話。
どうしても忘れられない話だった。
・・・戦後75年。
Aさんはこんな想いを75年も抱えつづけてきたのか。

わりと気楽に始めた企画だったが、回を重ねるごとに大事な仕事だと思い知る。
私にできることは、受け取った話をきちんと書き残しておくこと。
どこかの誰かに届けることだ。
Aさんの想いをたくさんの人に受け取ってもらえたら、なにかを考えるきっかけになってくれたらと願う。

Aさんの語ってくださったお話は、明日8/15更新の『さわやか今昔ものがたり』に掲載予定です。

本日の猫写真。

熱くて仕事どころじゃなくなったミー先輩。

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