憧れの舞台は今

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たまには介護を休んで趣味の話をしよう。

若い頃、私は本ばかり読んでいた。
小学生で神話にハマり、中学に上がると純文学にハマった。
高校に上がってまもなくハマったのが児童文学だ。

「良書との出会いは恋人との出会いに似ている」と言ったのは誰だった?
高校1年のとき友達に誘われて行った図書館で、その本と出会った。
なんだか表紙が怖いなあと思いつつ、ページをめくって立ち読みを始めた。

そのときの衝撃は30年経った今でもはっきり覚えている。
吸い込まれる、と思った。
本に吸い込まれる。
物語のなかに引きずりこまれてしまう。
・・・なんだこれは。
思わず閉じた。
書棚に戻した。
そのあと友達といっしょに帰ろうとしたが、どうしても気になって、
「やっぱりあの本、借りて帰る!」
と取りに戻った。
家に帰って読み始めたら最後、活字から目が離せなかった。手が本から離れなかった。

アリスン・アトリー『時の旅人』。古典的なタイムファンタジーだ。何がそんなにいいのか訊かれてもよくわからない。「全部いい」って言うしかない。本気の一目惚れだから。その本は、私の心の欠けている部分にぴったりとはまるピースだったのだ。どこからどこまでも隙間なく。

同じ本を2度も読むことはないのに、その本だけは擦り切れるまで読んで、原作にもがんばって挑戦した。舞台となったイギリスの荘園や屋敷が実在するのだと知ると、行ってみたいと思うようにもなった。でもイギリスは、ヨーロッパは、敷居が高くて値段が高くて・・・夢のままだ。

先日、その本をまた読もうとしたら、大事な本がずいぶんくたびれていることに気がついた。もう30年も読んでるんだもんなあ。新たに注文したけど、小野章さん翻訳のものは在庫がなかったりして、少し探した。

そしてふと、あの物語の舞台となった屋敷は現在どうなっているのだろうと考えた。一時はホステルとして旅行者を受け入れていたらしいけど、今も泊まれるのかな? 30年前と違い、今はネットでなんでも調べられるから、探してみた。

そしたらなんと、売りに出されていた

あのバビントンの荘園が…売られている…私の憧れの土地が売られている。手の届かない夢の舞台のはずだったのに、現実ではお金があれば買えてしまうのか。まるで初恋の人がいけない職業に身をやつしたのを見つけたかのようで、なんだかせつなくなってしまった。

本日の猫写真。

必死で布団をもみしだくサンジ君。その下には…シシィさんのしっぽがあるはずなんだけど…大丈夫?

コメント

  1. ブログいつも読ませていただいています。
    2回目のコメントなんですが、自分のHNを忘れました。

    私も、時の旅人を何回も読みましたよ。
    一時期、北イングランドに住んでいたことがあって、今から10年ほど前に、結構近くにあるアトリーさんの生家を見に行ったことがあります。(For Saleの看板が出ていました。)

    そこから彼女が通った小学校までの山の中の道を30分近くかけて歩いたのですが、帰宅後、彼女が時の旅人の舞台とした、バビントンがかつて所有していた家が、すぐ近くにあることを知り、翌週も訪問。
    外から眺めて、さぁ帰ろうと思った時に、住人の方が帰ってこられて、ご親切にも、家の内部を見せてくださるという、夢のような出来事がありました。

    だださんのブログで、忘れかけていたその時のことを思い出させていただき、感謝しています。
    時の旅人、また読んでみようかな。

    あ、ちなみに私が住んでいた町は、バビントンらの企みがバレて、処刑されたスコットランド女王メアリーが、14年間幽閉されていたシェフィールドという所です。

    • うわああああいいなあああああ!
      めっちゃ羨ましいです!
      シェフィールドに住んでいらしたのですか。
      それも憧れますね。
      日本だとすべてが変ってしまって面影すら残りませんが、イギリスは当時のままの風景が残っているのでしょうね。
      これからもこの先も何百年も…それに期待して、生きてるうちに見に行きたいものです。

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