2019年が終わろうとしている。今年も多くの利用者さんにお会いした。いろんな方がいらして、いろんなご家族があって、いろんなお家に入らせていただいた。
家族みんなで介護をしているお家。
たった一人で複数人の介護をしているお家。
スープのさめない距離に住む娘が通ってくるお家。
遠方の息子が毎月会いにくるお家。
家族がいても誰ひとり介護には携わらないお家。
家族がひとりもいない方。
虐待のある家。
犬のいる家。
猫のいる家。
老老介護。
ターミナルケア…。
同じ日本の同じ町に住む同じ年頃の方々なのに、こんなにも違うんだ、様々な家族が、様々な介護の形が、様々な人生があるのだと思い知った。忘れられない出会いがあり、忘れられない言葉をたくさんいただいた。さまざまな事情からサービス終了となった方も多かった。出会いと別れの一年だった。
本当にたくさん勉強させていただいた。もうお会いできない方も多いけれど、教えていただいたことを忘れず、来年もがんばって働こう。
仕事納の利用者さんは、車椅子ユーザーだった。気のしっかりした方だけど、ポロリと呟いた。
「私はもう車椅子だからどこへも行けないでしょう、レストランにも入れないし」
「そんなことないですよ!」
つい、言ってしまった。
今は車椅子だってどこにでも行けますよ! レストランだって観光地だってバリアフリーのところが増えています。うちの母はウィーンまで行っちゃいましたよ。
「えええええ、本当に!?」
本当はプライベートなことは話しちゃダメなんだけど、思わず言ってしまった。すると利用者さんは目を輝かせ、食い気味にきいてきた。
「どどど、どうやって行ったの? 車椅子って飛行機にのれるの? 現地に着いてからはどうするの?」
それで私はどうやって母を連れて行くか話した。オシャレをして外に出れば元気になります。リハビリになりますよ。
「でも、車椅子だと何を着ても同じでしょう?」
「そんなことないですよ!」
また、言ってしまった。
一番簡単なオシャレはひざかけです。綺麗なスカートをひざにかければ履いているように見えますし。あと、帽子も楽しいです。
車椅子だってどこにでも行けるし、オシャレもできるし、人生を楽しむことはできます。まだまだ楽しいことがいっぱいあります!
「すごい!」
利用者さんの顔が、日が射したように明るくなった。
「あなたの話を聞いていると、なんだか楽しくなってくる。希望が湧いてくるわ!」
それからこうも言った。
「私は車椅子になったからもう何もできないと思ってたの。でも違うのね。知らなかった。そんなこと全然知らなかった。だってテレビは、元気な人たちのための旅行とかオシャレしか教えてくれないんだもん!」
高齢者がバリアフリー情報を得ることは難しい。インターネットができないし、細かい字の本やパンフレットなどもつらくて読めない。テレビだけが唯一の情報源なのに、そういう番組は少ない。
だから私はせめて仕事を通して出会うお一人お一人に、車椅子でもオムツでも、人生を楽しむためにできることがまだあるかもしれないと、お伝えできればと思う。