母のじんましんは、朝にはすっかり良くなっていた。ぐっすり眠れたようで
「今日はちっとも痒くない!」
と嬉しそう。
元気いっぱいでデイサービスに出かけていった。
めでたし、めでたし。
・・・の、はずが!
夕方、帰宅した母はまたもや
「痒いーーーー!」
じんましんが再発していた。
じんましんって繰り返すんだよねえ。
すぐに処方薬を飲ませステロイドも塗ったが即効性があるものではない。大事なのは、昨日みたいな悪循環に陥らせないこと。気を紛らわせて痒みを忘れることだ。
「よおし!景気づけに(回転)寿司いこう!」
「いこー!」
母は痒いところを冷やすための保冷剤を握りしめたまま出かけた。そしてたくさん注文してたくさん食べた。トロ。海老。鯛。まぐろ。サーモン。赤だし。茶碗蒸し。
「おいしーねー!」
と言いながら、保冷剤を邪魔くさそうに放った。お寿司のせいで一時痒みを忘れたのだ。
今もまだ治まらないが、症状は徐々に落ち着きつつある。一週間くらいは繰り返すだろうと医師に言われているから、なるべく上手につきあっていこうと思う。
本日の猫写真。
自分のしっぽを抑えるサンちゃん。
さっき、母の気を紛らわせるために、録画したドラマを一緒に見た。『家売るオンナ』。今回、印象的だった台詞がこれだ。
「世間では親孝行が美徳だと思われている。僕もその考えにがんじがらめになっていた。でも、成人し独立すれば、親には親の、子には子の人生がある。子供が親の夢の犠牲になる必要はない。今こそ親子の縁を切れ。自分の人生を守るんだ。親孝行なんてクソくらえ!」
・・・庭野君、よう言うたなあ。
ぼんやり感心していたら、母が尋ねた。
「あんたも一人暮らししたい? 私の犠牲にならないで暮らしたい?」
うーん、どうかなあ。
一人暮らしはしたいけど。
「一人暮らししたら、掃除も洗濯もお料理もずっと一人でするんだよ?」
いや、今でも私一人でやってるやん…。
でもさ、夜にひとりでテレビ見るより、おかーさんと一緒にドラマを見たほうが楽しいよ。
「そうだよね、一人で暗い家に帰るの寂しいもんね!」
母はほっとしたように言った。
大丈夫だよ。私は母の犠牲になんかならないよ。少なくとも一方的な犠牲ではないよ。
庭野君の言葉は正しい。まったくそのとおりだと思う。
だがそれは若い時の話だ。
成人して独立し、親は親の、子は子の人生を生き、たとえ親子の縁を切っていたとしても、それでも・・・それでも、降りかかってくるものが介護である。
庭野君の言う通り。
親孝行なんかクソくらえだ。
そんなもの。
関係ない。
やるべきことだから、やる。
やりたいから、やる。
それだけだよ。
親の犠牲になるんじゃない。
受け入れて利用して自分の人生に活かしていいく。
それが私の介護人生だ。
コメント
おかーさんと一緒にテレビを見た方が 楽しいもん・・・・
素敵な言葉に一人暮らしさせている母のことを可哀想に思いました
いや…実は母といっしょにドラマを見ると、ストーリーを解説してあげなくちゃいけないから、面倒くさいんですけどね?(笑)
物理的には別々の場所にいても、いっしょにテレビを見ながら会話できるようなツールがあるといいですね。