叔父が脳出血で倒れたのは正月のこと。脳卒中は2回目で、1回目が右脳で2回目が左脳だったか、その逆だったかは忘れたが、とにかく両方の脳みそをまんべんなく損傷した。幸い2回とも発見が早かったので、わりと普通に歩けるし、手も動くし、高次脳もない。
ただ、喉と舌をやられた。
声がでず、舌も動かないから喋ることができない。
喉を動かせないから、食べたものを飲み込むことができない。
会話は筆談のみ。食事は、鼻に管を通して栄養をとっていた。だが、この管がかなり気持ち悪いらしい。感じ方は人によるらしいが、叔父の場合、気持ち悪すぎて鬱になるレベルだった。
「もうムリ!この管取っぱらってくれええええ!」
叔父の訴えにより、リハビリ病院へ転院してまもなく
「それじゃあ、『胃ろう』をしましょう」
という話になった。
胃ろうとは、胃に穴をあけて管を通し、直接、食べ物を胃に届けるシステムだ。毎日食事をするわけだからその穴はずっと開きっぱなしになる。ちょっと怖いよね。
叔母などは
「胃ろうをしたら一生そのまま」
と思っていたようだ。
「胃ろうをしたら人生おわり。ごはんも食べられずにやせ衰えて死んでいくんだわ」
たしかに一昔前はそうだった。
ところが現代では、ちょっと違うらしい。
胃ろうの手術(30分で終わった)から二十日余り。
久しぶりに会いに行くと、叔父はもうホワイトボードを持っていなかった。
「なんとかしゃべれるで」
かすれた声だがちゃんと聞き取れた。
邪魔な鼻管を取り払ったことで、リハビリが進んだのだとお医者さんは言った。
「これからお食事なんです」
看護師さんがいって、持ってきてくれたのは、胃ろうから入れるやつと、お盆にのったお粥。
・・・え、食べるの!?
「おう、食べてるでー」
お粥と海苔の佃煮。あとは、ゼリーとゼリーとみかんゼリー。何のゼリーかは不明だった。
「チョコレートまでは許可がでたんですよ」
と看護師さんが教えてくれた。
目標は、ごはんを全部食べられるようになって、胃ろうを取ること。
「胃ろうって、取れるんだ…」
驚く叔母にお医者さんが
「ちゃんと口から食事ができるようになったら胃ろうをはずします。穴はすぐにふさがります」
と言った。
たった二十日で。
喋るし、食べるし。
舌先も動くようになった。
胃ろう効果、ものすごい!
昔ながらの「延命のための胃ろう」ではなくて、リハビリのための処置、ということなんだと思う。
叔父は独身で、一人暮らしだ。
胃ろうの扱いを自分でできるようになったら退院ということだったけど、この調子だと「胃ろうが取れたら退院」になるかもしれない。
最後にお医者さんが
「ご家族に介護していただけるなら、今すぐにでも退院できるんですけどね?」
と、なにやら含みを持たせてきたが、私たちは完全に無視した。
本日の猫写真。
ジャンプの1.5秒前。
コメント
>ご家族に介護していただけるなら、今すぐにでも退院
いやいやいやいや。
それは現役バリバリで稼いでる父親と
子育てから解放され、時間も体力も有り余ってる母親と
五体満足で、健康で、気力体力充分の成人した子供が3~4人いる家族だったら、もしかしたらどうにかなるかもしれませんけど。
少なくともだださんのお宅の現状からは「断る!」以外の返答は考えられません。
叔父様にはお気の毒ですが、美談と理想にほだされて家族全員共倒れより救える家族を救うのを優先すべきです。
病院としては早く出ていってほしいのでしょうね(笑)
でも私はこれ以上ムリだし、叔父本人も一人暮らし希望なので、がんばってもらいます。
私自身もそうですが、独身世帯が増えているので、
「介護してくれる人がいないから退院できない」
という事態はますます増えるのではないでしょうか。