みんなでフィギュアの応援を

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デイサービスでの悩み事といえばレクである。レクリエーションの時間に何をやるか? ゲームか体操か歌を歌うのか、はたまた季節の工作か。ある程度予定はしていても、その日の利用者さんの顔ぶれや体調をみて融通をきかせなくてはいけないから、なかなか難しい。

だが今日は悩む必要がなかった。
朝いちばんに先輩はこう言った。
「今日のレクは、男子フィギュアの応援だね!」
と。

これはもう日本中がドキドキしていただろう。お昼ごはんを食べてるときから、利用者さんも、スタッフも、みんな気になって仕方がない。普段、デイのテレビはつけないことにしてるんだけど、12時30近くなると先輩が辛抱をきらしてテレビをつけにいった。

先輩は叫んだ。

「だださん!だださん!大変!
テレビが映らない!

私はそのとき皿洗いをしていたのだけど、そんなものほっぽりだしてすっ飛んでいった。 羽生が! 宇野が! パトリック・チャンが! 見られないなんて許されない!

日頃ほとんど使わないテレビはただの箱になっていた。コンセントを入れ、B-CASカードを入れ、スイッチを押しても沈黙したままだ。接触不良かもしれない。

「テレビつけええええええ!」

しばらくテレビと格闘した。テレビ裏にたまったホコリを吹き飛ばし、すべてのコード類を念入りに接続しなおしたら、ついた。
やっとついた!
利用者さんから久しぶりにほめられた。

ちょうど第5グループが始まるところだった。別の部屋にいた利用者さんも呼びにいって、みんなで応援をした。
いつも誰かしらが喋ってうるさい部屋なのに、羽生結弦の演技がはじまる時はしんと静まり返っていた。みんなで緊張しながら見守っていた。
ジャンプが決まると拍手が起こった。
「じょうずやなー」
「すごいなー」
技の名前とか何回転とか、順位とか点数とか、わからなくても皆さんすごく楽しんでる様子だった。
ふざけた上司が
「今、失敗したんじゃないのお?」
と無粋なことを言って茶化したら、
「失敗してへん!」
利用者さんにすごい勢いで叱られてた。
ネイサン・チェンが転倒したときには
「可哀想に」
「痛いんやろな」
「ケガないかいな」
と、まるで孫がコケたかのような騒ぎだった。

最後まで見終わったときには
「ハラハラしすぎ疲れた」
としんどくなっちゃった利用者さんもいたけど。
「家で一人でみてても、今ひとつやからな」
「みんなで盛り上がれてよかったな」
楽しんでもらえたみたい。
私たちも楽できた楽しかったし。
羽生くんの復活見れたし!
宇野昌磨くんも美しかったし!
明日も、楽しみです。


(シシィの肉球もつやつやで美しいです)

母も別のデイに行っているのですが、そこでもやっぱりフィギュアを見ていたそうです。