オヤジが動かない。
まったくなんにも動かない。
もともと生活不活発病のところにコロナが重なり、筋力がおびただしく低下した。
ちょっとでも歩かせようと散歩に誘うが断られるし、私もそんなにヒマじゃない。
面倒になって放置してるうちに酷いこといになってきた。
そのくせ自分はトイレにしか立たないくせに、タバコがほしいだのお菓子がほしいだの言うわけだ。
だんだん頭にきて
「そんなに欲しいなら自分で買ってこいやー!」
千円札をぶん投げた。
「タバコ買ってええの?」
・・・あ。
禁煙してるんだった。
後悔したがもう遅い。
オヤジは千円札をポケットにねじこんで出かけようとしている。
「い、一緒に行こうか?」
「いや」
一人がいいとオヤジは言う。
そりゃそうだろう。
お小遣いもらって意気揚々とおやつを買いに行く小学生男児の気分を想像してほしい。
それでもスマホだけは持たせておいた。
いざという時助けが呼べるように。
そしてGPSで見張れるように。
(マスクも無理やりつけましたよ)
最寄りのスーパーまで私の足なら5分。
オヤジのヨタヨタの足でも15分~20分。
往復で30分ちょいというところ。
オヤジもコロナ前はしょっちゅう買い物に行っていたものだ。
が!
今回はなんと1時間もかかった!
(GPS見つめながらイライラしたーーー!)
タバコ1箱だけ握りしめて帰ってきたオヤジは、足をひきずり疲れきって瀕死の有様。
もしかして転んだ?
「いや。ころ、ころ、ばなかった、けど、し、し、しんど、かった」
単に疲れちゃったみたい。
必死の思いでタバコ売り場には到達したけど、大好きなおつまみを買う余裕はなかったようだ。
お釣りはあげるから、また買いに行っておいでね。
次はついて行ってあげるから。
「そ、そ、そうして、くれるか」
・・・と、言ったものの、あれきりぜんぜん買いに行く気配がありません。
ちなみ自分で買いに行っちゃたから禁煙は挫折。
少しくらいならと私も妥協したんだけど、条件をつけた。
・タバコ代は週千円
・サンジを外に出したら次の週はナシ
・家の中で吸ったら永久にナシ
まあ、買いに行けなかったらどうしようもないんだけどね。
ちょっとくらい歩いてくれるといいな。