母のブローチ

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母が通うデイサービスの職員さんが、家に尋ねてきた。小さな包みを携えて。
「レクで作られたブローチをお持ちしました」

フェルトで作った花のブローチ。
先週のデイで作った作品だそうだ。母は自分で色をえらび、苦心してハサミで切ったらしい。その日のうちに持ち帰りたかったが、ボンドがまだ乾いていなかった。「また次回」と言われたが、母は
「東京の授賞式でつけたいから」
と駄々をこねた。今回の東京行きを母がどんなに楽しみにしているか、どんなにわくわくしているか。それを感じ取った職員さんが完成したブローチをわざわざ家まで持ってきてくださったのだ。

フェルトでできた、素朴な、とても素朴なブローチだ。これをつけていく場所がどんなところなのか、どんなに華やかで、どんなに偉い人たちに出会うのか、正直、見当もつかない。もしかしたらこのブローチはちょっぴり場に沿わないかもしれない。それでも持っていこうと思う。母の自慢の逸品だからね。

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