コンサートを観ようと、妹が入所している施設を訪れた。といっても普通のコンサートではない。施設の入所者によるコンサートだ。演目は『アリとキリギリス』、セリフと歌のミュージカル仕立てだった。
20人の出演者は全員が身障一級ホルダー。全員が車椅子だし、スムーズに喋ることができるのは20人中2、3人だろうか。重い身体障害にくわえて重い知的障害をもつ人も多い。
だから・・・最高に楽しかった!
うちの妹がステージ上から大声で「ママー!」と呼ぶから恥ずかしいなあって思ってたら、他の人は車椅子でお父さんに駆け寄っていった。かと思えば途中で飽きて脱走しちゃって帰ってこない人もいた。
セリフはすべて先生が教え、それを復唱する形なんだけど、半分くらいは言えてないし、もう半分はマイクを向けられたとたんにと黙ったり、まるで違うことを喋ったりする。
めーっちゃ自由!!!!
客席から笑いと拍手と励ましの声が絶えない舞台。あったかくて、微笑ましくて、それでも一生懸命な舞台だった。
(女性は衣装を着ています)
この舞台の役者たちは、踊るどころか動けないし、歌の音程もとれないし、セリフをちゃんと言うこともできない。
だけど楽しんでいた。
楽しんでいたのだ。
歌うことが楽しい。
生きることが楽しい。
楽しくって楽しくってたまらない!
それがこんなにも伝わってくる舞台が他にあるだろうか。
観ているこちらも楽しくなって、ハッピーになる。
妹も一生懸命に大きな声で歌っていた。全身の筋肉をガチガチにこわばらせながら、それでもお日様のような笑顔だった。
最後にみんなで『世界にひとつだけの花』を歌った。
♪僕らは世界にひとつだけの花
一人一人違う…
小さな花や大きな花
一つとして同じものはない
もともと特別なオンリーワン。
この歌が日本一ピッタリくる、まさにオンリーワンの舞台だった。
妹を施設に入れたことは後悔していない。ただ罪悪感だけを抱えつづけている。そんなもの感じる必要はないのだと誰かに言われても、他に方法がなかったのだと自分に言い訳しても、鉛のような罪悪感だけは一生消えることはない。家族を施設入所させたことのある人はみんなそうだと思う。
だから今日のようなコンサートはとても大事だ。仲間といっしょに生き生きと歌う姿をみれば、ここへ入れてよかった、すばらしい施設だったのがせめてもの救いだと、感じることができるから。
障害者も高齢者も、施設で暮らすすべての人たちが、いつまでも笑顔で歌えますように。