相変わらず、オヤジは一日、なんにもしない。
テレビばっかり、ぼんやり見ている。
それもただ眺めているだけのようで、今見たニュースさえ覚えていない。
散歩に誘っても買い物に誘ってもついて来ない。
体操や脳トレや、母といっしょに何かさせようとしてもぜんぶ拒否。
デイサービスのない日はひたすら食べて寝てタバコを吸うだけの1日だ。
このままだと、どんどん弱っていくだろう。
すでに1年前からは考えられないほど足が萎えてしまった。
「これじゃもうどこにも行けないよ?」
と私は言った。
「コロナが終わったら、旅行に行きたいんじゃなかったの!?」
「行きたい!」
はじめてオヤジがはっきりと声を出した。
旅行だけはどうしても行きたいんだって・・・。
じゃあ、もうちょっと頑張ろうよ!
以前から、コロナが終わったら3人で別府温泉に行こうと企てていた。
行きは新幹線。
帰りはフェリーで。
バリアフリーの宿をとって。
だが、母はともかく今のオヤジを連れていくのは至難の業だ。
駅の改札からホームまで歩けないだろう。
駐車場からフェリー乗り場までたどり着けないだろう。
私ひとりで車椅子2台も押せないよ?
物理的に無理!
絶対に無理!!!!
・・・というわけで車移動に路線変更。
あきらめたわけじゃない。
おでかけは最高のリハビリで、人間、目標がないと頑張れないからな。
さすが九州まで運転するのは現実的じゃないし、仕事が終わってから出発することになるから、もうちょっと近場で考えよう。
バリアフリーの宿で。
景色がよくて。
遠すぎないで。
高すぎないとこ。
よし!
彦根だ!
彦根のかんぽの宿!
待ってろ、ひこにゃん!
いつか行くから!
いつになるかは、ちょっとわからんけど!
「お父さんもそれまでリハビリ頑張ってよ!」
そう言ってオヤジを叱咤している。
秋までにもう少し歩けるようになってほしい。
最悪でも現状維持。
具体的な数値や短期目標を掲げることも考えてみよう。
部屋食ではないと思うけど、平日に泊まるだけなら、ワクチン打ったら行けるかなあ。
猫たちは・・・だいぶ怒るだろうけど・・・。