おしゃべりって難しい

私は人の話を聞くことが大好きだが、ときどき分からない。
その方が何の・・・誰の話をしてるのか、わからない。
主語を省いてしゃべるからだ。

「最近太っちゃって」
というから自分自身が太ったのかと思ってたら
「ダイエットさせようと頑張ってるんだけど、なかなか難しいんだよね。こっちの思ったとおりにはいかない」
っていうから亭主の話だと思いきや、
「ダイエットフードってマズいらしいよ。犬もやっぱり美味しいほうがいいんだよね」
犬の話だったりする。
わかるわけがない。

年代や性別に関わらず、こういう人は一定数いるものだ。
だが年齢を重ねると、なおさらこじれるのだろうか。
今日の利用者さんの話は難しかった。

「息子が会社を定年になって、この先は悠々自適かと思ったらそうでもなくって。まだ働くて言いますねん。『あんたなんか働けるかいな』って言うと怒りましてなあ。・・・で何やらかんやらありまして、人事部の偉いさんが『おまえいよいよ昇進やぞ』って言うんですわ」

んん？
定年になったのに昇進？

よくよく聞いてみれば、定年したのは息子だが、昇進したのは孫のようだ。
息子の話が孫の話にすり替わり、それがいつの間にか
「『おばあちゃん、ぼくアイスクリームが欲しい！』って言いますのよ」
４才のひ孫の話になっている。
ついていくのが大変だ。

主語がないうえに話題がコロコロ変わる。
今、誰の何の話をしているのか、推測し、推理し、答えを導き出さなくてはいけないが、たいてい正解にたどりつけずに
「なにいってるの、犬の話ですよ」
とか笑われてしまう。
難解である。

てなことを母に愚痴ったら、母は笑った。
「そんなの、お父さんに比べたらずっとマシじゃない！」
・・・たしかに。

オヤジは昔から極度の口下手だが、病気と加齢で、もはやしゃべる言葉が暗号である。こんなふうに。

「母がいないうちに外食をしよう」という話になって、「どこ食べに行こうか？」と尋ねたら
「給油所がいい」
という謎の答えが返ってきた。
給油所って何？ ガソリンスタンドのこと？
「そう」
ガソリンスタンドに食べるところがあるの？
「ちがう」
じゃあ何？
「俺の、昔いってた、給油所」
昔いってたガソリンスタンドの近所においしい店があるの？
「そう！」
で、それはどこ？
「おまえ、知らんの？」
知るわけがない。
どこにあるの？
「・・・給油所」
元に戻ってしまった。
ガソリンスタンドなんて、いっぱいあるからなあ。
じゃあ、店の名前は？
「・・・・」
何がおいしい店？
「いろいろ」
どの辺りにあるの？ 何市？何の近く？
「・・・給油所」
ダメだ。
何ひとつ手がかりがない。（2020年11/1）

ナゾナゾみたいなオヤジの言語を理解するにはかなりの慣れが必要だ。
ちなみに私は上記の謎を解けなかったが、あとになって母は
「西宮インター近くの王将のことでしょ、ガソリンスタンドが近くにある」
とすぐに理解していた。
夫婦ってすごい。
私とオヤジでは会話が成立しないので、母には長生きしていただきたい。

本日の猫写真。

仲がいいのか悪いのかわからない二人。