デイサービスで行くコスモス畑

私が勤めるデイはお散歩好き。
気候さえよければ毎日だって散歩に出かける。
今週もすでに２，３回出かけたそうで、ボスはちょっと疲れてたらしい。
「今日はやめとこうよー」
と言われちゃったんだけど。
私はどうしても出かけたかった。
デイの人たちと一緒にコスモスを見に行きたかった。
花畑に連れていきたかったんだ。

それで
「こんなに綺麗なんですよ！」
と、このあいだ両親をつれて行ったときの写真をお見せすると、利用者さんのほうが
「わーーー！」
「行きたーーーい！」
と盛り上がっちゃって、結局、行くことになった。

車で片道20分。
狭い山道をのぼり、昼なお暗い森を抜け、峠を越えると・・・
パッ！
と視界が開ける。
まぶしい空と、眼下にひろがる田園風景。
そして
「まあ、あれ、すごい！」
めったにしゃべらないSさんまで声をあげた。
「お花畑！」

一昨日よりもさらにたくさんの花がひらいていた。

「こんなにたくさんのコスモス初めて見た」
「きれい、きれい、きれいね！」

色とりどりの花と、青空と、緑の山。
コスモス畑のとなりには古い神社の鳥居がある。

「なんか懐かしい感じがする」
Kさんがうっとりと言った。
「私が育ったところもこんなだったの。田んぼと山ばかりでなあ。家も古くてあんなふうで。懐しいなあ」

利用者さんはみんなニュータウンの住人だ。
生まれ育ったふるさとを離れ、子供に引き取られてきた人が多い。
ニュータウンは便利だけど、田んぼもないし神社もない。
だから私はここへ皆さんを連れてきたかったのだ。
里山のコスモス畑へ。

もちろん、認知症の方がほとんどだから、みんなすぐに忘れてしまう。
帰る頃には
「今日どこ行ったっけ？」
「お出かけ、したかなあ？」
てなもんだ。

でも、それでいいのだ。
たった一瞬。
このときだけでも。
一人ぼっちの寂しさを忘れ、進みゆく病気の怖さを忘れ、忘れてしまう寂しさを忘れてもらえたら、それでいい。
ほんの刹那の笑顔のために、私たちは働いてる。
デイサービスってそういうものだと思う。

本日の猫写真。

仲良さそうに２匹が並んでるとき、よく見たら必ずどちらがイヤな顔してる。

ついでに私の口内炎はまだ治らない。仕事してるときは大丈夫だったのに・・・！