接客業をやってた若い頃、職場の先輩がこう教えてくれた。
 「お客さんがボケたらすかさずツッコんであげるんやで」
 関西文化において、相手のボケをスルーするのはマナー違反というわけだ。
ところがだ。
 今の職場はまったく逆!
 ツッコミ禁止。
 あくまでも、優しく。
 あくまでも、穏やかに。
 妄想を否定しないで。
 笑わないで。
 相手の世界観にあわせること。
 だって介護職だから。
たとえ利用者さんが渾身のボケをかましても、
 「そうですねえ」
 と流すしかない。
 利用者さんの言動がツッコミ待ちにし見えたとしても、黙ってスルーするしかない。
 泥棒が入って耳かきだけ盗んでいったという話にも
 「困りましたねえ」
 と言うしかないし、その泥棒がパンツ一丁だったり腹巻きひとつだったりしても
 「おかしな人ですねえ」
 しか言えない。
もうね。
 ツッコみたい。
 本当は全力でツッコミたい。
 心の中ではいつもツッコんでる。
耳かき1個だけ盗むて!
 どんだけこっすいねん!
 しかもパンイチ? いや、腹巻きしてるって?
 それもう、ただのヤバい人やん!
 泥棒ちゃうやん、変態さんやん!
「そうなのよ変態なのよ」
・・・あ、心の声、もれてた。
いや、たいていは真面目に話し聞いてるんですけども。
 たまにツボを突いてくる利用者さんがおられるのです・・・。
明日は母が退院してきます。
 家族にはツッコんでもいいと思うので、思う存分、おもしろがってやろうと思います。



