訪問介護の仕事を終えて記録を書いていると、テレビが正午を告げた。
「黙祷。」
75年目の終戦記念日だ。
「あのときはなあ、真っ暗やった」
利用者さんがふと口にした。
「戦争というのは勝っても負けても、いいことなんか一つもない・・・勝ったアメリカはいい国になったのか?」
この夏は戦争の話をいっぱい聴かせていただいた。
少しでも書き残したくて。若い人に伝えたくて。
そう話したら利用者さんに
「どんなに頑張って書いたところで、本当のところは伝わらないと思います」
と言われた。
・・・それはそうだと思った。
本当のところ、戦争がどんなに恐ろしいものか、実際に経験したわけじゃない私にはわからないのだ。防空壕の匂いも、焼夷弾の落ちてくる音も、機銃掃射で狙われる恐怖も、死と隣り合わせの毎日を送る気持ちも、実際には知らないのだ。
なのに「伝えたい」だなんて、私のとんだ思い上がりだ。
そう思うと恥ずかしかった。
それでも私は聞き取りをつづけるつもりだ。
本当のところを知らないからこそ教えていただきたいと思う。
たとえ、100分の1しか伝わらなくても。
同じ時代を過ごしても、見るものも感じることも人それぞれに違うはず。
終戦の日を真っ暗に感じた方もあれば、堂々と灯りをつけられることが嬉しかったという方もいる。
利用者さんが何を見てどんなふうに感じたか、ひとつひとつ書き残しておきたい。
やっぱり思い上がりかもしれないけど、私にできることはただ、本当のところを知っている方の言葉を残しておくことだけだから。
夜、NHKの『太陽の子』を泣きながら見てた。
重くてつらいドラマだった。
でも、重くてつらい合間にときどき
「すぴー ずびー すぴー ずぴー」
サンジの平和ないびきが聞こえてくるので、ちょっと和んだ。
コメント
戦争経験のおはなしを聞き、それを残すことは大切なことだと思います。
もちろん、本当のことは伝わらないでしょう。
わたしたちは戦争を経験していませんから。
けれど、戦争を経験していないことはありがたいことのはず。
そしてこれからも経験しなくてすむように、経験者の話を残しておくことが大切じゃないかと。
8月15日の「さわやか今昔ものがたり」は胸が詰まりました。
おはなしを聞きそれを文章にすることは、かなり辛いことではないかと思います。
でも、どうぞこれからも書き続けてください。
お願いします。
ありがとうございます。
正直、これからどうやっていこうかと悩んでおりましたので、救われた思いです。
>そしてこれからも経験しなくてすむように、経験者の話を残しておくことが大切じゃないかと。
そのとおりですね。
お話してくださる利用者さんに、そんなふうにご説明させていただこうと思います。
女の子の話は泣きながら話してくださいました。
録音もできなかったんですけど、絶対に無駄にはするまいと、一言一句を頭に刻み込んで聞き取りました。
物事を正しく判断する為には、まず出来る限り情報を集める事が必要です。過去の詳細を何も知らずに、ただ周囲に流されるように、戦争反対とつぶやくのは違う気がします。だださんがされている事には大きな意味があると思います。この方々はいつか居なくなり、こうして想いを共有している私たちもいつか居なくなりますが、この方々の貴重な話は事実として読み継がれていきます。
ありがとうございます。
周りに流されないために、自分で考えるために。
難しいことなんですよね。
そのために知っておかなくてはならないことですよね。
何が起こったか歴史的なことは本を読めばわかります。
でもそんな俯瞰的なことではなく実際に経験した方の、一人一人の見たものを記録しておきたいです。
今は戦争のことばかりですが、夏が終わったらもっと日常の楽しい話も書いていきます。
すべてをふくめて大事なことだと思っています。