「逃げてはいけない」は間違っている

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子供の頃、親や教師や大人のひとたちによく言われたものだ。
「逃げてはいけない」
と。
「嫌なことから逃げてはいけない。勇気をもって立ち向かえ!」
私は心も体も弱い子だったから、ずっと叱られつづけてた。
逃げるのは悪いことだと。
臆病なことだと。
卑怯だと。
自分のためにならないと。
逃げずに正面から立ち向かうという美学を叩き込まれた。

でも大人になるとその教えは間違っていることがわかった。
逃げてもいい。
むしろ全力で逃げなくちゃいけない時だってある。

老人ホームに入所中の母親を息子が殺そうとしたニュースを読んだ。詳しいことはわからないけれどもすごく悲しくなってしまった。

介護を知らない人たちは、入所させたら介護は終わりだと思っているが、そんな簡単ではない。
入所したって家族はことあるごとに呼び出される。
通院も家族が付き添わなくちゃいけなかったりもする。
暴力や暴言がひどければ、せっかく入れたホームも退所させられてしまう。
「入れっぱなし」の人が多い一方で「ほぼ毎日通っている」という家族もけっこういる。

ホームで母親を殺そうとした息子はすぐに自首したそうだ。詳細は何も書かれていないが10年間頑張ってきた息子だ。
「介護から逃げてはいけない」
と思いつめていたのかもしれない。もしかしたら、逃げる方法もあったのかもしれないが・・・全然なかったのかもしれない。
とにかく自分の力では逃げることができなかったから、強制的に引き離してもらいたかったんだろう。警察のお世話になったら絶対に離れられるから。

介護家庭はみんな同じ危険をはらんでいる。
追い詰められてはいけない。
逃げなくちゃいけないときは、逃げよう。
いっぱいいっぱいになる前に逃げよう。
逃げる方法を、逃げこめる場所を、助けてくれる人を、見つけておこう。

子供の頃には教わった「逃げてはいけない」は間違っている。
正しく教えるなら「逃げ道を確保しながら戦え」ではないだろうか。

本日の猫写真。

柱にもたれそこなって、コケて、そのまんま寝てるシシィさん。

コメント

  1. 最初から頑張ろうとする姿勢も工夫する努力もなく、人に押し付け、逃げ足だけは呆れるほど早い━そんな無責任な大人になってはいけませんよという逃げ癖怠け癖を戒める教えなんでしょうが、

    自身の心身を損なってしまうくらい真面目で一途で一生懸命な人に対しては
    逃げろ
    手を離せ
    テケトーでいい と繰り返し訴えるのが大切だと思っています。

    男性介護者って割と成果主義というかこれだけ頑張ったんだから同等の成果があって当然と考えてしまう場合が多いようです。
    そんな計画通りにいかないんだよーん。

    記事の息子さんは残念でした。
    頑張らない介護、笑える介護は理想ですが、実際には粉骨砕身、眉間に縦皺刻むのが実態です。
    だからこそ、孝行息子じゃない自分を受け入れ、手を離す度胸を持ち、逃げ出す冷静さを持って欲しかったですね。

    • そっか逃げ癖ですか。
      私あるなあ。
      だからよく叱られたのでしょうね。
      真面目で勤勉もいいけれど、日本人は肩の力を抜くのが苦手なようで。
      真面目だから親孝行な息子を目指しちゃうんでしょうね。
      何事もほどほどがいいんでしょうけど・・・それが一番難しいんですよね。

      >男性介護者って割と成果主義というかこれだけ頑張ったんだから同等の成果があって当然と考えてしまう場合が多いようです。
      ええ・・・成果ですか。
      時は残酷なもので、報われることなんかあんまりないですよね。
      介護は男性にとっては仕事で、女性にとっては生活、という違いがあるのかもしれませんね。