160メートルの冒険

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退職後、すっかり出不精になって、というより生活不活発病になっちゃって、一日中テレビを眺めているオヤジ。糖尿病の気もあるというのに、びっくりするほど動かない。これをなんとか動かさねばならぬ。なんとか外へ出さねばならぬ。

本当はちゃんと病院へ行っていただきたいところだが、
「死んでも病院にはいかない!」
と言う。死んでもいいなら、どうしようもない。一方で、将棋同好会には喜んで出かけて行ったから、楽しいことがあれば動けるのだ。

・・・何かいい手はないものか。
と考えていたところへ、
『ドラクエ・ウォークがサービス開始!』
と知らせが入った。
『ドラクエ・ウォーク』はスマホのゲームだ。『ポケモンGO』と同じような種類。GPSと現実の地図を使い、目的地に向かって徒歩で歩いていく。歩けば歩くほどキャラクターが強くなりストーリーが進む。『ドラクエ・ウォーク』はそのの名の通り、歩くゲームなのだ。

オヤジはポケモンには馴染みがないが、ドラクエは昔から好きだから、いいかもしれない。やってみよう。
「いや、やめとくわ・・・」
説明もしないうちからこの返事である。
そのくせ、盛大なため息をつきながら
「何かいいことないかなあ」
とか言うておる。イラッとくる。

いいことは、待っててもこない! ため息ついてるだけじゃ、一生いいことなんかない! いいことや楽しいことは、自分でつくるもんだ!「 幸せは歩いてこない、だから歩いて行くんだね」って水前寺清子も言ってるぞー!

オヤジはしぶしぶスマホを差し出した。早速『ドラクエウォーク』をインストール。もちろん私のスマホにもインストールした。

さあ、冒険にでよう!
旅立て勇者よ!
母もつきえあえ!
「えー、なんで私が」
デイサービスから帰ったばかりの母は面倒くさそうに言ったが、今日は涼しい風が吹いているというとついてきてくれた。だって、オヤジと2人きりで歩くのなんか絶対に嫌だからね!

冒険の目的地を近所のスーパーに設定。
「目的地まで160メートル」
と表示された。これくらいなら歩けるだろう。春までは平気で往復していたのだ。

母の車椅子を押し、よぼよぼと歩くオヤジを連れて、歩き始める。
てくてく。
てくてく。

道中、敵のモンスターが襲ってくると、オヤジは立ち止まり、無言でスマホ操作をしている。
♪ タラララッタッタ~
レベルアップしている。ゲームは順調のようだ。

徒歩5分くらいで目的地のスーパーに到着。待ちかまえていたモンスターを打倒した。
「よっしゃ、やったあ」
喜ぶ私の横でオヤジはやっぱり無言である。母がつまらなそうに「もう帰ろう」と言った。

久しぶりに涼しい夕暮れ

来たときと同じ道を160メートル引き返す。
てくてく。
てくてく。

5分ほどで家に帰りつくと
「ああ、しんど!」
オヤジがやっと口をきいた。
「もうあかん!」
ええっ、片道160メートル、往復320メートルしか歩いてないよ? ゴルフ場だとミドル1ホール分くらいだよ?(オヤジは6月までゴルフ場勤務だった)
いくらなんでも体力落ちすぎじゃない?
明日も頑張ろう?
「・・・・」
オヤジはやっぱり無言である。どうやら歩くのがしんどすぎてゲームを楽しむ余裕などなかったらしい。勇者への道のりは険しいようだ。

それでも今日は片道160メートルを歩いて往復した。たった160メートルだけど、昨日よりは歩いた。2歩さがったけど、3歩すすんだのだ。

本日の猫写真。

大好きな洗濯カゴで遊んでたら、シシィさんに邪魔されたサンジ

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