ゾンビ・オヤジができること

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オヤジは今日もゾンビである。
生活不活発病ゾンビ。
うつ症状も入ってるんだろう。
無気力・無関心で一日中ただぼーっと座りつづけている。
食欲もない。
声もでない。
その姿はもはや生ける屍、いや、ゾンビのほうがまだ活発に動くだろう。

さて今日は台風である。
母のデイサービスは休みになった。
それでも私は仕事がある。
こういうのが在宅介護の困ったところ。
母を残して行かなくちゃいけない。
母をオヤジと・・・生活不活発病ゾンビのオヤジと、2人きりにしなくちゃいけない!

話しかけても上の空。
時間の感覚もまったくない。
電話が鳴っても気づかない。
一日中ぼーーっと座ってるだけ。
そんなゾンビみたいなオヤジに母を預けていくのは不安だった。
水分補給すらされずに放置されたらどうしよう・・・。

お父さんが頼りだから!
と、一生懸命に訴えてみた。
私がいないあいだ、おかあさんをよろしくね!
トイレにつれていって、お茶を飲ませて、お昼ごはんを用意してあげてね!
「んー・・・」
ゾンビ・オヤジは唸った。
どう? できる?
「さあなあ・・・」
蚊の鳴くような声。いかにも面倒くさそうな顔だった。土の下に戻りたいのに許してもらえないと悲しんでるゾンビみたいな顔だった。

まあ実際には私も1,2時間おきにプチ帰宅するので、母は安全なんだけれどね。
ゾンビ・オヤジに任務を与えることはいいリハビリになるはずだと思って任せたのだ。

オヤジはよく頑張った。
元気だった頃には遠く及ばないが、今日は2回もトイレ介助してくれたし、ごはんも買いに行ってくれた(妙なものばかり買ってきたけど)。

それに今日は、1人でぼーっとするんじゃなくて、母の部屋でぼーっとしていた。
母が本を読んでる隣に座って、ぼーっとしていた。
同じぼーっとするのでも、1人きりでいるのと、隣に人がいるのとでは、ちょっとは違うだろう。

もとより誰の言葉もきかないオヤジだ。
とくに今はゾンビ状態だから、普通の言葉は届かない。
どんなに動こうといっても、話しかけても、嫌そうな顔をするだけでビクともしない。
・・・だけど母のためなら頑張れるかもしれない。

在宅介護を始めたとき、オヤジは最初なにもできなかった。介助どころか入れ歯を洗うことさえできなかった。
だけど、
「かーさんは俺の嫁さんやもん!」
と一念発起、トイレ介助までできるようになったのだ。
そんなオヤジだから。
そんな夫婦だから。
母のためなら、ゾンビを克服できるかもしれないじゃないか。

今は筋力が弱って少し危なっかしいけれど、見守りながら、母のことはなるべくやってもらおうと思う。
オヤジにとって介護は最高のリハビリになるのかもしれない。