かえる、かえる

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施設暮らしの妹・U子が帰宅した。
月一回、数時間だけの里帰りだ。
時間が短いから、妹はその数時間めいっぱい歌って、叫んで、
「ママー!パパー!だだー!」
と家族を呼びまくって甘える。オーストラリアの姪っ子たちともLINEで話す。猫たちも次々にU子の上に乗ってきておかえりなさいを言う。
興奮しすぎるのか水下痢を起こしてズボンもシーツも2枚ずつ洗濯して大騒ぎだった。
まあいつものことなんだけど。
「早くごはん食べて(施設に)帰ろうな」
と言っちゃうオヤジは本音が出すぎて悪魔のようだった。

左がU子の、右が私の足。歩いたことのないU子の足には土踏まずがない

新しい靴下をいただいので大喜びして履いて帰った。
「この色は私の!この色はお姉ちゃんの!」
とか勝手に決めていた。

夕方、U子はオヤジの車で施設に戻った。
「あいつな、車のなかで、『かえる、かえる』って何回も言うねん」
オヤジは困ったように呟いた。
「お家に帰りたいんか? ってきいたら『かえるー!』って」
そんなこときくなや!
オヤジの口下手は本格的に悪魔じみている。

U子は、私にはそんなことは言わない。家に泊まれば一晩中眠れず、私とケンカになることがよくわかっているから。
・・・しょうがないもんな。
そんな顔で帰っていく。

「家族を施設に入れたからといって罪悪感にかられてないけない」
と言われたことがあるけれど。
こればっかりは。
多分、無理。

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