障害者による障害者の食事介助

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月に一度の里帰り。妹・U子を施設に迎えにいく。
部屋へいくと
「今お手洗い中なのでお待ちくださいね」
と職員さんが言った。入所前、U子がショートステイを利用していた頃からお世話になっているベテランの方だ。にこにこしながらこんな話をしてくれた。

「昨日ね、とってもおもしろかったんですよ。『お風呂に入りましょうか』って言うとU子さんハッキリ『イヤ!』っていうんです。何回きいても『イヤ!』。なのにお風呂へお連れすると『はいるー!』って。それがもう可愛くて可愛くて、みんなで大笑いしたんです」

可愛い?
それのどこが可愛いと!?

私はびっくり仰天だ。反抗期の子供みたいなことばっかり言うからかなり面倒くさいのに。こんな怪獣みたいな子を可愛いと言ってくれるなんて、この人たち菩薩様じゃないだろうか!? それも家族を喜ばせようとしてじゃなく、いかにも愛しそうに話してくれている。U子の産みの母は一人だが、第二の母はヘルパーさんで、第三の母はこの施設にいたのだと思った。

そのときトイレの中から妹の金切り声が聞こえてきた。私が来たことを知って興奮しているのだ。
「だだーだだーだだー!」
トイレくらい静かにしなさいよ!と叫び返すと、職員さんがまた笑って
「お家でもこんな感じですか」
と尋ねるから
「こんな可愛いもんじゃありません。叫びっぱなしの怪獣になるんです」
と答えると、さしもの第三の母も目を丸くしていた。

妹が帰宅した日はリクエストどおりの夕飯をつくる。だがこの「リクエスト」を聞きとるのが難しい。妹は言葉がだいぶ不自由だから、何と言っているのか全然わかんないのだ。

今日の晩ごはんは何が食べたい?
「いーきーきー!」
うん、わからんわ。
お肉?
「うん!」
魚?
「うん!」
卵料理?」
「うん!」
全部ウンて言うな。
じゃあ、和食?
「うん!」
洋食?
「うん!」
あかんな。
ほんまは何が食べたいん?
「いーかーき!」
いや、わからんて。しかもさっきと微妙に違うやん。もう一回いうてみて。
「かーきーき!」
・・・とりあえず三文字なんやな。
30分くらいかけて妹が食べたいものは「おなべ」だと判明した。鍋料理。「い」も「か」も「き」もかすってさえいない。

私が夕飯を買い出しにいったり、母の介助をしている間、U子は怪獣に変身して叫んでいる。録画して第三の母に見せてやりたいくらいである。ぎゃおおお!

でもご飯の支度ができるとまた笑顔になった。
「今日はおかーさんが食べさせてあげるね!」
と母も張り切る。障害者が障害者の食事介助をするのである。車椅子を2台ならべてみるが、これがなかなか至難の技。
なぜかというと・・・写真を見てもらえればわかると思う。

汚い顔だけど勘弁してください。

1級障害どうしの食事介助

母は右手しか使えない。U子は顔が右に向いてしまう。頑張れば頑張るほどうまくいかない。母は
「口が! U子の口がない!」
と苦労していた。(車椅子の並びを逆にすると、母は左が見えないのでかなり危険。部屋が狭いため向かい合わせにもなれない)
結局、私が妹の首を支えることで食事はできたけど。毎回大騒ぎである。

家に帰ると妹は、3回分くらい一気に排便をしてえらいことになって、着替えて、そのあと普段は食べられないお菓子とかアイスクリームとかお刺身とか食べ散らかして、また排便して着替えて、スッキリして施設に帰っていく。やれやれ。今夜はいい子で寝てくれてるといいな。

コメント

  1. お母さまも妹さんも嬉しそう~ステキな笑顔ですね!妹さんは、カイジュウになってしまうほどにご帰宅が楽しみで、だださんとお母さまのことが大・大・大好きなんですね。いつも、あたたかい気持ちにさせてくれてありがとうございます。鬼は~外、だださんに福は~内(^O^)/☆

    • ありがとうございます。
      妹はこの笑顔でヘルパーさんを何人もたぶらかし味方につけてきたのですよ…中身は怪獣のくせに…。
      喜んでくれるのは嬉しいのですが、帰宅するとタガが外れちゃうのが困ります。