「どうしてできないの？」

認知症の方がこんなことを言った。

「最近、よく子供によく怒られるねん。

『どうして、これくらいできないの？』
『どうして、これくらい覚えられないの？』
『どうして、ぜんぶ忘れちゃうの！？』

どうしてって言われてもなあ。
そんなん私が知りたいわ！」

そうやんなあ。
どうしてって、言われてもなあ。
しゃあないやん、そんなもん。
仕方がないことだから。
『どうしてできないの』なんて、言っちゃダメなんだ。

一方で言いたくなる気持ちもわかる。
つい、思っちゃうんだよね。

こんな簡単なこと、できて当然なのに。
前はできたのに。
どうしてできなくなっちゃったの？
本気でやってるの？
もしかして、ふざけてるんじゃないの？
もしかして、本気を出したらできるんじゃないの？
お願いだからできるようになってよ。
元に戻ってよ。
昔みたいに戻ってよ！
・・・ついつい、そう思ってしまうんだ。
在宅介護５年目やってもまだそんな一瞬がある。
頭では理解しているつもりでも、心の片隅では、受け入れていないのか、あきらめきれない部分があって。イライラするのはその証拠。どこかで奇跡を願っているのだろう。

少し、自分のこととして考えてみた。
私には苦手なことがいっぱいある。
料理が苦手だし、計算も難しいし、裁縫なんてぜんぜんダメ。ボタン付けさえ手こずるレベル。
他の人たちが軽々とこなしていることが不可能だったりする。
それを
「こんな簡単ことが、どうしてできないの？
本気出してないんじゃないの？」
と言われたらムッとすると思う。
傷つくと思う。
とくに年下の人に言われたりしたら。
どうしてって言われても。
「できないものはできない！」
としか言いようがない。
少し、違うのかもしれないけど。
少しだけ、想像してみたんだ。

あんまりこぼさずに食べること。
トイレでちゃんと用を足すこと。
今日の予定を覚えておくこと。
声を出さずに静かにしておくこと。

多くの人には「できてあたりまえ」のことが、できない人もいる。
それは、どうしようもないこと。
しかたのないこと。
私だって、明日にはできなくなるかもしれないこと。

「できてあたりまえ」のことなんて、実は一つもないのだろう。
うん、気をつけよう…。

※「どうしてできないのか」という理由を探し、できるようにする努力は、また別次元の話です。念のため。

本日の猫写真。

「え、この車椅子、あたしのなんだけど？」と言ってるシシィさん。どいてください…。

シシィには、「車椅子の邪魔をせずにいること」がとても難しいみたいです。なんでだろう？