聖夜に「おかあさんがバイオリンを弾いた!」

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クリスマス・イヴに忙しいのはサンタクロースだけじゃない。ケーキを焼く人もチキンを売る人も、それから私も、朝から大忙しだった。

施設に妹を迎えにいったり、昼ごはんを食べたり、ケーキを食べたり、晩ごはんを食べたり、またケーキを食べたり…主に食べることに忙しい。

音楽の演奏もした。私と母の2人バイオリンに加え、姪っ子・梅の子供用バイオリン、そして椿のフルートで『きよしこの夜』を奏でた。どれも拙い音しか出ないのだけど、3つの音が重なりあうと、とても我が家らしい、ほんわかした音楽になった。

重度障害のある妹は布団に寝たまま演奏を聴いており、そのときは何も言わなかったが、あとになって
「おかあさんがバイオリンを弾いたことにびっくりした!」
と教えてくれた。

かつて妹にとって母は絶対的だった。親というばかりでなく、主介護者であり、生きることのほぼすべてを頼る存在だったからだ。その母が倒れたとき、妹はこの世の終わりのような顔をしていたものだ。母が自分と同じように重い障害を負ってしまったという事実を受け入れるのにもずいぶん時間がかかった。バイオリンはその象徴であり、私たちがどんなに「2人でバイオリンを弾いてるよ」と言っても聞いてくれようとしなかった。

その妹が、今日はじめて
「おかあさんがバイオリンを弾いてる!」
と認識したのだ。私達の腕があがったのかも? ちょっと嬉しかった。

百均のサンタ衣装を着せられたシシィさん。
あんまりご機嫌とは言えない。1分で脱いだ。

これまで妹は、クリスマスや年末年始は家に泊まっていた。だけど今年はもうやめた。家にいるのは日中だけ、夜には施設に連れ帰る。年越しも施設で過ごしてもらう予定だ。

可哀想だとは思う。家族一緒にクリスマスの朝を迎えたり、居間で紅白を最後まで見たいだろうと思う。できることならそうしてあげたい。

でも無理なのだ。
「お願いだからサンタさん助けてください」
と祈りながら聖夜を過ごしたり、気が狂いそうな思いで除夜の鐘を聞いたり、いつか殺してしまうんじゃないかと泣きながら初日の出を迎えたり、・・・妹と過ごす夜というのは、そんな過酷な夜なのだ。だから、もう、やめたんだ。そのために施設にお世話になっているのだから。

妹もちゃんとそれが分かっていて、時間がくると悲しい顔で「(施設に)帰る」と自分から言い、ワガママはひとつも言わなかった。

妹の施設から帰宅すると、私にクリスマスプレゼントが届いていた。

サンタさんありがとう!

温かいメッセージが嬉しかった。「強くなった」って言ってもらった。そうなんだろうか。この1年、私は強くなったのだろうか。自分ではわからない。ただ、自分を守らなくちゃいけない、って一生懸命に考えてる。自分の体を、心を、人生を・・・あ、お金も。以前に「自分を守ることが家族を守ることになる」って教えてもらったから。つらくても、それができるように、来年も頑張る。

コメント

  1. だださん、こんばんは。
    お久しぶりです。
    ご家族みんなが揃ったクリスマス、キラキラしてますね^ ^

    誰もだださんを責める資格なんてないのに、距離が近い人も遠い人も、いろいろ言うものです。
    でも、一番責めているのはきっと自分自身なんですよね。
    「してあげたい、でもできない」「わかってる、でも・・・」と、いろんな相反する気持ちの間でただただ苦しくなってしまう。

    でもね、施設では落ち着いて生活していても、自宅に帰ると全く寝られない、お家の方にわがままを言ってしまう、本人にも理由がわからない興奮状態に陥ってしまうことって、よくあるんですよ。
    大好きな人たちに囲まれて、大好きな場所にいると、感情があふれてコントロールできなくなってしまうように感じます。
    そして、みんな外泊の度に疲れ果ててしまう(ご本人も)。
    施設に帰ってくると、寂しそうでもありますが、ほっとした表情を見せるのも本当です。
    妹さんにも妹さんの日常がきっともうしっかりあるのでしょう。

    だから罪悪感を感じないでくださいね、というのは簡単だけど、それは言えません。
    だって罪悪感はありますよね、どうしたって。
    あえて言うなら、罪悪感に負けずにご自分を守ってください!
    支える側にもゆとりややさしさにキャパはあるんです、やっぱり。

    一緒にいる時間を思いっきり慈しみ楽しんで、
    また会える時を楽しみにして、
    それぞれの日常を生きる。
    どんな家族でも、そうあったら幸せだな、と思います。

    • しょうさん・・・
      すごくすごく分かってくださって、ありがとうございます。
      思わず泣いちゃいましたやん。

      >施設では落ち着いて生活していても、自宅に帰ると全く寝られない、お家の方にわがままを言ってしまう、本人にも理由がわからない興奮状態に陥ってしまうことって、よくあるんですよ。

      そうなんですか!
      わけがわからないハイテンションになっちゃって…という感じなんでしょうか。

      >施設に帰ってくると、寂しそうでもありますが、ほっとした表情を見せるのも本当です。
      妹さんにも妹さんの日常がきっともうしっかりあるのでしょう。

      そう言っていただけると救われる思いです。
      妹は妹の人生を歩んでいるのですね。
      「可哀想だから」と互いの無理をわかって強いるのは、ひとりよがりの善意になるのでしょう。

      >一緒にいる時間を思いっきり慈しみ楽しんで、
      また会える時を楽しみにして、
      それぞれの日常を生きる。
      どんな家族でも、そうあったら幸せだな、と思います。

      本当に!
      両親を施設に入所された娘さんが
      「今まではケンカが絶えなかったけど、入所したことで仲良し親子に戻れた」
      と言っていました。
      うちも同じです。
      施設で働く方々は大変な思いをされていて申し訳ないと思うのですが、
      いつまでも仲良しでいるために、適度な距離を保っていこうと思います。
      大切なことを教えてくださってありがとうございました。

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