音楽の満ちる家

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今日はサンジがやけに元気だった。シシィよりも元気だった。
ごはんごはんと何度もせがみ、遊べ遊べと請求し、トンネルをくぐって走り抜け、人が集まれば中心に陣取り、話の主役になろうとした。

母が寝ようとすると、これ。

どうしても、どかない。頑としてどかない。「猫枕」の誕生である。

今日は母の高校オーケストラ部時代のお友達が2人も来てくださって、昔話に花を咲かせた。だいたいが音楽の話だった。オーケストラ、カルテット、チェロ、バイオリン、ヴィオラ、ピアノ。音楽、音楽、音楽、また音楽。

みなさん当然のようにバイオリンを持ってきてくださっていた。お客様の2人はバッハの『2つのバイオリンのための協奏曲』を弾いてくださったし、私と母は2人バイオリンでマルティーニのガボットを弾いた。そして全員そろってザイツのコンチェルトやベートーヴェンを弾き、最後は3つのパートに分かれてユダス・マカベウスの『合唱』を弾いた。

繊細な高音、流れるような低音。フォルテッシモが包み込み、ピッチカートが跳ねていく。家の中に音楽が満ちるのはなんて素敵なことなのだろうか。

音が止んだとき、お客様のひとりがおっしゃった。

「バイオリンって、一人で弾いたってそんなにおもしろい楽器じゃないんだ。みんなで弾くための楽器だし、みんなで合わせるために練習をするんだ」

そのとおりだと思った。私は若い頃、バイオリンを弾くことがあまり好きではなかった。まったく興味がもてなかった。今でも音楽が好きなのか、興味があるのかといわれれば、かなり疑わしい。だが母と2人バイオリンを弾くのは楽しいし、他の人たちと音を合わせるとなんだかドキドキする。不思議なものだと思う。

母は終始キラキラとした瞳で楽譜を見つめ、右手をいっぱいに動かして弓を弾いていた。高校を卒業して半世紀以上が過ぎたというのにこんなに楽しめるんだから、母は本当に良い青春を送ったのだと思う。幸せなことだと思う。

「あーあ、ほんとに楽しかったね! すっかり高校生に戻っちゃったよ。今日のおかーさん、あんたよりも若いからね!」

コメント

  1. お母さま、さぞ楽しかったでしょうね❣️
    みんなで一つのものを成し遂げる、達成感もですが、そのプロセスが楽しいのです。
    2人ヴァイオリン、とても素敵です。
    生で聴いてみたい…🎵

    • はい、母はとっても幸せそうでした。
      音を合わせ息を合わせ、ひとつの曲を演奏すれば、心もひとつになるような、そんな幸せです。
      2人バイオリン・・・ご想像だけにされたほうが良いかも(笑)
      生で聞くに耐える音かと言われれば・・・!

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