みんなと一緒に弾きたくて

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昨日、母が久しぶりに妄想を見たという記事を書いた。音楽家グループのコンサートに出られないと知ってショックを受けたせいだ。

母はずいぶん回復し自分の障害もほぼ理解できるというのに、この音楽家グループだけはトラウマで、半年ごとに行われるコンサートのたびに「バイオリンが弾けない」という傷口が開いてしまうのだ。なんとか克服できないものかと悩んでいた。

そうしたら今朝、
「昨日のブログを読みました」
と、音楽家グループの方からメールを頂いた。
「最後の曲を一緒に弾きませんか?」

コンサートの最後はいつも舞台と客席がいっしょに歌える曲で締めくくる。次のコンサートの〆は『きよしこの夜』。それを一緒に弾いたらどうでしょう、ということだった。言ってみればオマケのような曲なんだけど、そんなことはぜんぜん良かった。むしろそっちのほうが良かった。
「ほんとに? すーーーっごく嬉しい!」
母は声を潤ませて喜んだ。
「またみんなと一緒に弾けるのね!」

・・・ああ、そうだったのか。
私はようやく腑に落ちた。
トラウマの正体がやっとわかった。
大事なのは
「みんなと一緒に弾く」
ことだった。

母にとっての音楽は、一人で弾いて一人で楽しむものではなく「みんなと一緒に」楽しむものなのかもしれない。だから昔から合奏やオーケストラが大好きなんだ。

脳出血に倒れて大事な25周年コンサートに出られなかったとき、母は遠足に行きそびれた子供みたいな寂しさを味わったのかもしれない。そして半年ごとに開かれる仲間のコンサートをみるたびに複雑な表情を浮かべるのは、ただバイオリンを弾けないというだけではなく
「私だけ弾けない」
という疎外感を味わうからなのだろう。母はもう一度、仲間に入りたかったのだ。

正直、プロが集まったコンサートにへたくそな2人バイオリンが出たらすごく迷惑だし、恥ずかしい。でも「みんなで歌いましょう」の曲ならきっと大丈夫だ。舞台も、客席も、母も、私も、上手でも、下手でも、みんな一緒に音楽を楽しむことができる。それこそ母の大好きな音楽ではないだろうか。トラウマを乗り越えるチャンス!

コンサートはまだ何か月も先だけど
「たくさん練習しようね」
と母は張り切っている。
車椅子でも、片腕だけでも。
再び仲間に入れてもらえるなら。
こんなに幸せなことはない。
お忙しいところメールを下さったKさん、本当に本当にありがとうございます!

・・・本日の猫写真。
「仕事なんかに行かせないにゃ!」

リュック返してくださいシシィさん…。

コメント

  1. お母さまの心にあった叫びは、みんなと一緒、だったのですね。
    経験もきちんとした知識もない者が、こんな時にどんな
    言葉をと躊躇い、昨日は何も言えませんでした。
    コンサートグループの方の温かいごお気持と、お母さまのお喜び
    を知った今、安堵感いっぱいです。

    シシイちゃ~ん、もっと遊んで遊んで遊んで、以下同文して
    もらいたいの~?

    • ありがとうございます。
      トラウマの原因は「弾けないこと」だと思っていましたが、それだけではなかったことに初めて気が付きました。
      たぶん大事な仲間と一緒にいたかったしょうね。

      今日はお客さんが来たのでシシィはたくさん遊んでもらえて大満足してますよー。

  2. だださん今晩は。
    お母さまとだださんに、新たなワクワクが舞い降りてよかったです。私も胸が熱くなりました。
    昨秋、難病になっちゃった私の夫の趣味はゴルフ。入院中先生に「ゴルフが出来なくなるなら生きてる意味がない。」と言い放ちました。退院後、お陰様で平地を歩くことはできるので、仲間は、普通に今もゴルフに誘って下さいます。きっと、いっぱい気を遣わせていることと思いますが、私は喜々して出かけていく夫を見て、皆さんに感謝し心で合掌しています。
    なんか、そんな私の思いを、だださんの文章力で綴っていただいたような気がしてうれしかったです。 それではまたね。

    • おお、ゴルフですか、いいですねー!
      そろそろ良いシーズンですものね!

      >仲間は、普通に今もゴルフに誘って下さいます。きっと、いっぱい気を遣わせていることと思いますが、私は喜々して出かけていく夫を見て、皆さんに感謝し心で合掌しています。

      お気持ちよく分かります。
      お互い良いお友達に恵まれてよかったですね。
      情熱を燃やせる生き甲斐があり、それを続けられるのは、本当に幸せなことです。

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