愛情だけでは介護はできない

金曜日。私が仕事に出ているあいだ、両親２人で過ごす日だ。いつも帰りは５時半くらいになるのだけど、今日はちょっと胸騒ぎがしたので気持ち早めに上がらせてもらった。

買いものもせずに帰宅し、まっすぐ母の部屋に向かう。
すると・・・

「なんやこれ！」
思わず叫んでしまった。
「暑いやろ！！！！」
窓を締め切り、蒸し風呂のような部屋の中で、母は布団にくるまっていた。お茶は用意してあったけど母の手には届かないところにあった。どんな我慢大会だよ！

大急ぎで窓を開け、布団をはぎとって母を起こしたら、汗びっしょりだ。それだけじゃない。粗相をしてシーツまでびっしょりだった。
「あったかくて気持ちいいよ？」
母はとぼけたことを言っているが、それは無視してお茶を飲ませ、服もシーツも全部替えた。

オヤジはというと、隣室で韓流ドラマをぼんやり見ていた。
なにやってるねーん！

話をきくと、窓をあけるのは
「忘れてた」
らしい。
「トイレはちょっと前（どれくらいのちょっとかは不明）につれていった」
暑いと思わなかった？ ときいたら
「俺は水をいっぱいのんでた」
とサイコパスみたいな答えが帰ってきた。
俺じゃなくて！ お母さんにも飲ませてよ！
「俺すぐ隣にずっといたのに。言ってくれたらいいのに」
自分でわかって言えるようだったら要介護５なんかもらえません！
隣じゃなくて、ちょっとでいいから同じ部屋にいてくれよ。
熱中症で死んじゃうよ！
「そうなんか・・・」
これはアカン。絶対アカン！

オヤジは母のことが大好きだ。私が働きたいっていったとき、
「週１回くらいなら俺がみるから！」
と言ってくれたし、
「夕飯も作らなアカンな！」
と頑張って料理にも挑戦してくれている。２人とも金曜日のデートを楽しみにしていて、今日は２人で図書館へいって、お気に入りの店でランチを食べて、私へおみやげのドーナツまで買ってきてくれた。そして頑張りすぎて、疲れてぼんやりしてたらしい。

オヤジはすごくすごく頑張ってくれている。それはわかる。
だけどこのままでは、母はオヤジに殺される。

これまでにも何度かこういうことがあって、そのたびにヘルパーさんに入ってもらおうと提案したのだけど、オヤジは
「頑張るから！」
と言うし、母もせっかくの二人の時間を邪魔されたくない様子だった。

それで私はマニュアルを作った。
何種類も作った。
先月も作った。
だけどオヤジはもともと字を読むことがすごく苦手だし、読んでもすぐ忘れるし、じきに失くしてしまうのだ（壁に貼ると読みにくいという）。

今回のことでふっきれた。
愛情だけでは介護はできない。
人間、向き不向きというものがある。
想像力に極端に乏しいオヤジには、介護は向いているとはいえない。オヤジに任せられるのはせいぜい３時間。夕方までなんて体力的にも無理だったのだ。

私は母の着替えがすませるとすぐ、ケアマネさんに電話をかけた。そしてヘルパーさんの手配をお願いした。両親がランチデートから帰った後、ヘルパーさんに入ってもらって、状態チェックをしてもらおう。そのあいだはオヤジも休憩できるし、ヘルパーさんのあと１，２時間なら頑張れるはずだ。そう話したら、母も納得したし、オヤジも
「わかった」
とうなだれた。そして
「病院に行く日だったの忘れてた」
と逃亡した。陰で泣いているのかもしれない。

とにかく・・・ヘルパーさんが見つかりますように！

扇風機をつけてほしがるサンジ君。でもそこ、風こないよ？