ずっと同じ

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母が首をひねっている。
「おかしいなあ、おかしいなあ…」
どうしたの? と尋ねると
「こんなに毎日リハビリしてるのに、どうして私の左手は動かないんやろう?」
母は左手の指を曲げたりのばしたり、こねくりまわしながらため息をついた。
「ちっとも動かへんわ。これじゃ、いつまでたってもバイオリンは弾けへんねえ」
麻痺した左手はピクリとも動かず、皮膚感覚もない。脳出血を起こして4年。いろいろ試したが変化はない。ずーっと同じ。
「えっと…今日はスコーンを焼こうか!」
返答に困った私が美味しいもののほうへ話をそらすのも、ずっと同じ。
「スコーンいいね!」
母がにっこり笑ってくれるのも、同じ。

キャットタワーのてっぺんから見下ろしてるサンジ君。私を見下ろし、母を見下ろし、シシィを見下ろし・・・「おまえ、のぼってくるなよ!」という時の顔。

コメント

  1. 話を逸らす側と逸らされ側の気持が通い合っているだけに、
    重さを感じました。お察しします。
    二人バイオリンではないけれど、ピアノ弾きだった左半身
    不随の友は、右手と娘さんの左手で連弾をするように
    なりましたが、やはり時としてもどかしくてたまらなく
    なるそうです。

    サンちゃんや、その「おまえ」という睨みは、ずっと効き目
    があるのかな? 

    • 素敵な親子さんですね!
      ピアノは連弾できるからいいなあって思います。
      片手用の曲も、片手のピアニストもいらっしゃいますよね。
      それでもやっぱりもどかしさは変わらないのですか。
      難しいなあ…。