高次脳機能障害、我が家の場合

スポンサーリンク

小室哲哉さんの不倫とか引退の記事で「高次脳機能障害」という言葉をよく目にする。奥さんのKEIKOさんが高次脳機能障害で…という話で。

うちの母は、まさにその高次脳機能障害だ。だから、何か語ろうと思ったんだ。「高次脳機能障害ってこんなに大変です!つらいです!」みたいな記事を。・・・でも、無理だった・・・。大変とか、つらいとか・・・ぜんぜん無いか、あったとしても記憶から消去されて思い出せない。

高次脳機能障害とは、ケガや病気で脳に傷ができ、さまざまな障害がでること。
母の場合はこんな感じ。

・人の顔の見分けがつかない:家族の顔もわかりません
・何も覚えられない:新しいことが何ひとつ頭に入りません
・モノの左半分が見えない:カレーライスを見ても白いごはんしか見えない
・字が読めない:漢字の偏が見えない。横書きはほぼ見えない。
・10秒前のことも忘れる:同じ話を百回くらいリピート
・モノの使い方がわからない:シュークリームをどうすればいいか分からなくて?叩き潰してみたり
・日時や場所がわからない:日付がわからないので毎日がクリスマス!
・妄想をみまくる:もはやメルヘンの住人でした

この頃の母はしっちゃかめっちゃかで、申し訳ないけど、本当に申し訳ないけど、私はかなり楽しかったんです。ごめんなさい。

だって毎日毎日
「今日クリスマス?」
「今日はお正月?」
「今日はお餅つき?」
ってきかれるんだよ。
楽しいじゃない?

百回くらい同じ話をリピートしたときは、
「うるせえ」
って思ったけど、だいたい猫が相手してくれてたし(母はたまに猫と私を間違えて話しかけることもあった)、とにかく妄想が凄すぎて、たまのリピートくらいならあんまり気にならなかった。

高次脳機能障害のあらわれ方は様々だ。母の障害を笑いとばすことができたのは、私自身がクレイジーだっただけではなく、幸いにも暴言や暴力という障害が出なかったせいだ。運がよかったのだと思う。

だが。
私とちがって、オヤジはずいぶんつらい思いをしたようだ。
「愛する人が変わってしまった」からだ。

「だってな、人生がくるっと変わってもうたんやもん!」
口下手なオヤジは一生懸命に考えて話してくれた。
「今までと全然、違うんやもん。それまでやったら、一緒にゴハン食べに行ったりな、話したりな、いろいろできたやろ。それが何もかもできへんようになった。まるで目の間に壁ができたみたいに。それまでとは遮断されてしまったみたいに」

壁ができたみたいに。
目の前で遮断されたみたいに。

自分の顔もわからない、話もまともに通じない。
自分が愛したあの人は、もういなくなってしまった。変わりはててしまった。

それがどんなに寂しかったことか。悲しかったことか。
その寂しさは、悲しさは、娘の私には分かり得ないものなのかもしれない。

ついでに「同じ介護者として、不倫についてはどう思う?」と尋ねたら、オヤジはきっぱりと
「アカンにきまっとるやろー」
と言った。
「寂しかったら友達として話せばいいやろ」

さらに母にも「お父さんが不倫したらどうする?」ときいてみたら
「家出するもん!」
と言われた。

母の高次脳は、現在ではかなり回復している。

・縦書きの文字はなんでも読める(横書きは苦手)
・日にちや場所はだいたい分る
・左半分が見えないことを理解して気をつけられる
・妄想は不安なときしか出ない
・親しい人の顔は見分けがつく
・モノの使い方を間違うことはない(が、わりと下手)
・むちゃくちゃ頑張ったら新しいことを覚えられる

母はたしかに昔とは変わってしまった。食べ物の好みまで変わった。でも、私は元気だった頃の母をおぼろげにしか思い出せない。今の母でも十分OK。昔からボケ専門だったし、まあ元からこんな人だったんじゃないかなって思っている。

動けなくても。見えなくても。理解できていなくても。母は母であることに変わりはない。私の前ではいつも笑って、
「人生楽しんだ者勝ち!」
って言っている。母は、ちっとも変わっていない。

本日の猫写真。


(窓のところに鳥さん来た!って見ているサンちゃん)

サンジが通院するときは洗濯ネットに入れていくので、近頃、私が洗濯しようと準備しているだけで
「また病院につれていかれる!」
とビクビクしています。

コメント

  1. だださんこんばんわ
    出版おめでとうございます!!
    モチのロンで拝読させていただきます。
    忙しい合間に文章を書かれ校正し大変なご苦労があったと思いますが、だださんの描くノンフィクションの世界観がたまらなく好きで惚れ込んでおります。
    楽しみです!

    さてさて、この辺りも寒さが厳しくなってきました。
    母も先週は高熱で大変でした。
    体調が悪いと色んな妄想が繰り広げられ、笑って交わすくらいしか方法もなく…。
    何とか昨日からディに行けるようになりました。
    こんな母でも元気がないと寂しいと言っていただけるディのスタッフさんに感謝です。
    熨斗をつけてプレゼントしたいくらいです!

    北摂地域も明日は寒くなりますからお互いにからだ気を付けましょうね。

    • tomoさん、毎日の介護お疲れ様です!
      ノンフィクション!
      わあ、かっこよさげ!
      ただの日記書きですよー(笑)

      お母様インフルだったのでしょうか?
      回復されたのはよかったですが、看病は大変だったのではないでしょうか。
      体調がわるいときの妄想はうちの母も残っています。
      (どうしようもないのでわりと放置…。)
      tomoさんがお疲れ出ませんように!

      このへんは雪こそないですが、ものごっつ寒いですね!
      明日の朝はマイナス何度まで下がるのでしょうか…。
      また給湯器が凍るんだろうなー

タイトルとURLをコピーしました