オヤジの退院

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前回の記事からまた数か月あいてしまった。
現在、オヤジは退院して両親ともに在宅介護となった。
相変わらずいろんなことがある。
相変わらずバタバタしている。
気が向いたときに少しずつ書いていこうと思う。

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オヤジが脳梗塞で入院したのは去年の7月のこと。
「家に帰って猫をだっこしたい」
と泣きながら水頭症の手術をうけ、リハビリ病院に転院した。
だが劇的に治る病気ではない。
当初は12月上旬に退院予定だったのに、在宅介護は厳しいと思われたのか
「もう1か月頑張ってみましょう」
と延期になった。
ケアマネさんが
「これでお正月はゆっくりできますね!」
とのたまった。そのとおりである。
そのとおりだけれど・・・。

私はオヤジを年内に連れて帰ってやりたかった。
年末年始には妹が子供をつれて帰省するからだ。
オーストラリアに住む妹は、コロナ渦だなんだでなかなか帰国できず、子供たちが日本にくるのは実に4年ぶり!
オヤジが4年ぶりに孫に会うチャンスを奪うのは可哀そうである。
それで
「なんとか1月7日までに退院させてください」
と頼み込んだ。

病院の反応は微妙だった。
オヤジは足に力がなく自力ではほぼ歩けない。
トイレも全介助。
嚥下がわるく食事にはトロミが必要。
言葉もほとんどでない。
歩けないくせに勝手に立ち上がっては転ぶので常に見張ってなければいけない。
この状態で家に帰るのはどうか?といわれた。
まして母とのW介護となれば・・・。
「おひとりで介護するのでは厳しいかと」

客観的にみれば私だってこの面倒くさいオヤジを1人でみるのは無理だろうと思う。
24時間見張っているなんて不可能。
勝手に立ち上がって転倒して、ケガしてまた入院するだろう。
そして今度こそ施設にいくだろう。
これまで仕事でみてきた「いつものパターン」をたどるに違いない。
・・・それでも。
それでも、わかっていても。
病院から直接、施設へ行くのはためらわれた。

だってオヤジは
「家に帰ってサンジをだっこしたい」
と、泣きながら手術することを決心したのだから。
この数か月間は私たち家族や看護師さんやPTの先生たちに
「お家に帰るためにリハビリを頑張りましょうね」
と、ずっと励まされてきたのだから。
頑張るだけ頑張らせておいて
「やっぱり施設に行って」
と言い放つのはウソだと思った。

家に帰ったら、きっとまた転ぶ。
それだけじゃない。
誤嚥性肺炎か、骨折か、また脳梗塞か。
絶対に何かやらかすだろう。
無理だと思う時がくる。
それでも、たとえ1週間でも、孫と一緒にご飯をたべて猫のサンジと一緒のお布団で眠ることができたら。
そしたら、あきらめられるんじゃないか。
ウソじゃなくなるんじゃないか。
約束は守られるんじゃないか。

そう思って、病院に頼み込んで、私はオヤジを退院させた。
1月4日。
正月が終わり、妹たち一家がオーストラリアに戻る3日前のことだった。

(つづく)