介護者の防御力

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私は長いあいだサービス業をやっていたので、今でもつい、利用者さんのことを「お客さん」と言ってしまうことがある。癖ってなかなか直らない。

サービス業をやっているときも「いろんな人がいるもんだなあ」と思いながら接客していた。
優しい人もいたし、意地悪してくる人もいたし、大金持ちもいたし、ボロボロの服を着た人もいた。
しんどいこともあったけど、いろんな人と接することで私は成長できるんだと、自分を磨いていくんだと考えていた。

お客さんが利用者さんに変わった今でもそれはおんなじだ。
本当にいろんな人がいるもので。
100年近くも生きてると、人間もこってりと濃く煮詰まってくるんだろう。
いらないものは切り捨てて。
大事なものだけ残るから。
利用者さんて、クセの強い人しかいない・・・。
というか、クセのない人間、なんてハナから存在しないんだろう。
きっと私もクセが強い。

怒られても。
嫌がられても。
帰れって言われても。
帰るなって言われても。
「うちの子になってほしい」と言われても。
ぜんぜん話が通じなくても。
淡々と。
介護しましょう・・・仕事だからね!
お客さんでも利用者さんでも同じこと。
その人のために働けたらそれでいい。

が、これが家族だと、そんなふうには割り切れない。
ぜんぜん割り切れない!

家族だからこそ耐えられないっていうよりは、1円ももらえない、感謝の言葉ひとつもないとなると、ストレス耐性がめちゃくちゃ低くなるのだと思う。
仕事では100あった防御力がゼロになる。
いわばお金で雇われた傭兵が
「タダじゃ働けないね」
というみたいに。
いつもじゃないけど、ときどきそうなる。
私ってなんて強欲なんだろう。

でも本当は楽しいことのほうが多いんだ。
デイサービスのゲームで優勝した利用者さんが金メダルをもらって
「キンメダイもらった、キンメダイー!」
とか言ってるのみると「魚じゃねえよ!」ってツッコミながら抱きしめたくなる。
母に
「あんた、こういうの詳しいんでしょ、AIとかAVとか」
って言われると「なんかちょっと違う!」ってツッコミながらやっぱり抱きしめたくなる。
ぬれたパンツを持ってオロオロしているオヤジをみると、ヨシヨシしてあげたくなる。

シシィは高級魚より釜揚げしらす好きです

なんのために介護をするのか。
防御力が削られると、わからなくなるけど。
それでもなんとかやってゆこう。
一人ひとりのクセを愛して。