おっさんとおっさん猫

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サンジ。
トラ猫。
こう見えて13才のおっさんである。

おっさんの腕にだかれるおっさん猫

おっさんはおっさん同士、仲がいい。
夜はオヤジのベッドで寝るし、昼間もしょっちゅう一緒にいる。
サンジはオヤジが大好きなのだ。

オヤジが食事するときは必ず膝か、同じ椅子に座ろうとする。
朝ごはんなんて、オヤジの隣りでなければ食べようとしない。

オヤジのトーストとサンジのごはん

腎臓病で食欲が落ちたときに、「食べるなら、なんでもいい」と甘やかしちゃったせいもあるけど。
サンジはオヤジのことを
「この人は何をしても怒らない」
とナメているのだ。

実際、体の衰えたオヤジにはもう往年の迫力はない。
怒っても大きな声を出してもぜんぜん怖くない。
「あ、こら、ダメ!」
とか言われても平気の平左。
オヤジが杖でつっついて脅かしてもサンジはまったく動じない。

それどころか近ごろサンジは
「おとうさんは僕をお外に出してくれる!」
と勘違いしている。
オヤジがタバコを吸いに玄関を開けるとき、サンジも一緒に出てしまうのだ。

サンジはもともと野良だから、家に入って10年過ぎた今でも外界への憧れが強い。
それでオヤジがぼんやりしている隙にちょろりと脱走してしまう。
「おとうさん、ありがとう。行ってきまーす!」
オヤジはゆっくりしか動けないから、猫の動きを止めることができない。
それどころかサンジが逃げたことに気づきもしない。
どれほど「気をつけて」「外へ出さないで」と念を押しても無理なのだ。

今日も仕事から帰ったら、サンジが玄関ドアの前で
「おかえりにゃー!」
と出迎えてくれた。
・・・あんたまた出てたの。
「うん、楽しかったよ!」
サンジはご機嫌でいっぱいお話をしてくれる。
オヤジは
「あれ?いつのまに出てたんや」
と首をかしげる。

・・・でも、サンジ。
サンジが野良猫だった時よりもこの街は世知辛くなっている。
飼い猫が外を歩くことはもう許されないんだよ。
それに車も危ないし。
お願いだから外へ行かないで!

サンジ「だって、おとうさんが出してくれるんだもん」
オヤジ「だって、勝手に出るんやもん」

ああ、今日も我が家のおっさんズはダメダメである。