妖怪ポイポイ

デイのない日、母は本を読んだりテレビを見て過ごすが、
「なにか手伝えることある？」
と、きいてくることがある。
「私も主婦なんだから家事をしなくっちゃ！」
要はヒマなのである。

仕方ないので、ヒマをつぶせる用事を探して少し付き合う。
洗濯、掃除、皿洗い、料理・・・。
母一人でできることなどほぼ皆無。
掃除機やモップは車椅子を動かしてあげないといけないし、洗濯物干しは扱いやすいタオルを選んで渡してやらないといけないし、皿洗いは濯ぎ専門で、それもぜんぶチェックが必要、といった具合。

こちらに余裕のあるときは楽しいが、週末の夜になるとそうでもない。
土曜の夜は疲れてるんだ。
かといって放置しておくのも可哀想で、
「じゃあ大根を切って。味噌汁に入れるから」
と菜切り包丁を渡した。
「わかった！」
母は絶好調で包丁をふるい始めた。
ドン！ドン！ドン！
豪快にぶつ切りにしている。
それじゃあ火が通らない・・・もう少し小さくしてください・・・。
「ええーめんどくさい！」
ドン！ドン！ドン！

母は片手しかつかえないので、かえって手を切ることはない。
それでも目を離すべきじゃないのだけれど、私はハンバーグを焼いているところだった。
ちょっとだけ目を離してしまった。
「切れたよ！」
という声に振り返ると、野菜の中に、鼻をかんだティッシュがいっぱい混じっていた。
「で、でたー！妖怪どこでもポイポイめー！」
母はゴミ箱の区別がつかない時があり、どこにでもゴミを捨てる妖怪なのである。
よりによって生野菜のなかに放り込むとは！
くっそーーーー！
・・・疲れてるときはちょっと笑えない。

明日は日曜。
しかも父の日。
まあ、のんびり・・・テレビでも見るかな。