デイサービスでシュークリーム作り

デイサービスの仕事で一番大変なのは、レクを考えることである。
毎日のレクリエーション。
ボランティアさんの演奏やイベントがあればいいが、何もない日は、ゲームとか工作とかパズルとか、楽しんで頂けることを必死で考えねばならない。

今週、私にはやってみたいことがあった。だが利用者さんが喜んでくださるかどうか、いや、参加してもらえるかどうかさえ、わからなかった。だから
「今日はちょっと冒険をします！」
と切り出した。
「シュークリームを作ります。手伝ってくださる方を募集します！」
「シュークリーム！？」
驚きの声が上がる。
「そんなもん作れるの？」
「・・・多分！」
「多分て！」
「シューが膨らむ可能性は50％。それに賭けてみたい方はいらっしゃいませんか？」

４名の利用者さんが一緒に作ってくださることになった。
いずれも認知症の80代女性である。
認知症とはいえ、主婦の底力を侮るなかれ！
材料を量るところから全行程、利用者さんにやっていただいた。
卵黄と卵白を分けるのも
「まかせといて」
と完璧だったし、
「絶対に焦がさへんでえ！」
とカスタードもきれいに仕上げてくださった。
卵も溶きまくってくださったし、シュー生地も練りまくってくださる。
実に手際がいい。
想像以上に手際がいい。
サクサクと進んでいく。
主婦パワーすごいな！

１時間後には「残すはシューを焼くだけ」となった。
オーブンの予熱も完了している。
これは膨らみそうな予感！
「最後に霧吹きで水をかけるのですが・・・あ、霧吹きがありませんね。指にちょっとだけ水をつけて、ほんのちょっとだけ生地の表面を濡らしてください」
「わかった、霧吹きの代わりやね」
うなずきながら一人の利用者さんが、手のひらいっぱいに水をすくい、生地の上にバシャン！とぶちまけた。
「うわあああ！」
思わず叫んでしまったがもう遅い。
シュー生地は水に沈んでいる。
びっしょびしょである。
洪水である。

終わった…。
こんな生地で膨らむわけがない…。
やはり侮ってはいけなかった…。

それでもあきらめず、できるだけ水分を拭き取って、焼いてみた。

オーブンを開けたとき
「・・・シイタケ？」
とつぶやいてしまった。
びしょびしょになって膨らみそこねたシューは、UFO型の、ほぼシイタケだった。

ところが！
切り込みを入れて、カスタードを挟んでみると・・・あら不思議！

それなりに美味しいシュークリームになりました！

膨らみそこねたシューはサクサクと香ばしく、まるでお店のクッキーシューのよう。
「すごーい、ちゃんとシュークリームになってる！」
「手作りとは思えん味やねえ」
「まさかデイサービスでこんなもん作れるとは！」
利用者さんも絶賛してくれたし、作った方は得意満面だった。

疲れたけどやってよかった。