オヤジからのラブレター

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母が入院して10日ほどになる。
コロナのせいで面会は禁止。
ナースステーションを通して差し入れはできるが、それも「必要最小限で」と言われている。
寝巻もレンタルだから洗濯さえ要らない。
家族は楽ちんである。

ただ、だんだん心配になってくる。
病院ではリハビリもあんまりしてもらえないだろうから。

筋力が落ちてるんじゃないだろうか。
高次脳が悪化してるんじゃないだろうか。
退屈で死にそうになってるんじゃないだろうか。

せめてもの思いで手紙を持っていった。
数日前には、私と孫たちからの手紙を。
そして今日は・・・オヤジからの手紙を。

オヤジは言葉が苦手である。
話すのも書くのも極端に苦手である。
そんなオヤジにしてみれば、手紙を書くなんて、大変な作業だっただろう。
大いなる試練だったに違いない。

それでも便箋とペンを用意しておいたら、ちゃんと書いていた。
便箋に半ページ。
たった数行の手紙。
オヤジにとってはほとんどラブレターみたいなもんだろうから、悪いと思って中は見なかった。
・・・と言いたいところだけど、最後に
「サンジとシーシーが寂しがっています」
と書いてあるのが見えちゃった。
寂しがっているのは自分なのに、そうは書けなかったんだろうな。

暇つぶし用の本と、オヤジのラブレター、それに個包装のビスケットを2枚、看護師さんに預けた。
基本的に食べ物はダメらしいが
「一口サイズの小さいお菓子をたまになら、目をつぶってもらえるよ」
という噂を聞いたので実行してみた。
ちゃんと届けてくれたみたい。

全力で私の邪魔をするシシィさん

看護師さんはいつも手が足りない。妊婦さんの看護師さんも忙しそうに働いている。母がいい子でいてくれるといいんだけど・・・。

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