いつまでもお元気で

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介護職は出会いと別れの仕事である。
別れには、亡くなったりや施設に入所されたりしてお別れする方が多いが、遠方に住む子供さんと一緒に住むため引っ越しされる方もある。

「心配だわ。この年で引っ越しなんて」
F子さんは何度もそう繰り返した。
高齢者の引っ越しは危険がいっぱい。
環境の変化についていけず、認知症になったり認知症が進行するケースが、とてもとても多い。
一か八かの賭けだといってもいい。

暗い顔のF子さんに、私は昔のことを聴かせてくださいとお願いした。
子供のころのことを教えてください、と。
するとF子さんは
「昔の話ならいっぱいあるのよ」
と聴かせてくださった。
しばらくの間、現実の不安を忘れて話してくださった。
そうして話してくださったお話が『2個のランドセル』だ。

F子さんはお話が上手な方だった。
もっとお話したかったなあ。
いっぱいあるお話を、もっと聴かせてもらいたかったなあ。

記事をプリントアウトして渡したら、むちゃくちゃ喜んでくださって。
「一生の宝物にするからね!」
と言ってくださった。
「あなたたちに会えてよかった。不安なときにヘルパーさんに助けてもらえてよかった」
とも。
「あなたたちと別れるのが寂しいし、心細い」
えっと、大丈夫!
引っ越した先でもたくさんのヘルパーがF子さんを助けてくれますよ!

そういってお別れしてから数週間が経つ。
高齢者の引っ越しは一か八かの賭けだけど。
F子さんはきっと元気でおられるはずだ
そう信じている。

本日の猫写真。

シシィはずっと母の帰りを待っています。
私が帰宅すると、ダッシュしてきて
「おかあさん、帰ってきた?」
ときいてきます。
まだだよ、と答えると・・・悲しそう。