介護しあう夫婦

オヤジが要支援をもらいまして、と話すと
「まあ、大変ねえ！ ややこしいのが２人になっちゃって」
とよく言われる。

大変っちゃ大変だけど。
今はわりとうまくいっている。
２人を別々にみるのは大変だから、なるべく一緒くたにみるようにしている。
一昨日の散歩だってそう。
２人一緒だと、うまくいくのだ。
なんたって夫婦だから。

私は訪問介護の仕事をしていて、本来は訪問１件おきに家に帰ってちょこまかと両親の世話をしている。
母をトイレに連れていったり、オヤジが悪さをしないよう見張らなければいけない。

だが臨時の仕事が入ったりして、まるまる３時間帰れないこともある。
今日もそうだった。

要介護４の母と要支援１のオヤジを３時間、放置する。
ちょっと心配である。

だから、互いの面倒を見合ってもらうことにした。
母はオヤジを。
オヤジは母を。
不自由な者どうしで互いを介護する。

母には
「おとうさんがお酒やタバコを飲まないように見張っておいて」
と頼む。
母は40年もオヤジの世話をしてきたわけだから、
「お酒のんだら離婚よ！って言っとくね！」
張り切ってくれる。頼もしい。

オヤジには
「お母さんが退屈してきたら、コーヒーいれたり面倒みてあげて」
と頼む。
オヤジは愛する妻になんでも貢ぎたかる男だから、コーヒーどころか昼食まで用意してくれる。甲斐甲斐しい。

私は２人が喜びそうな映画を再生して、
「お家で映画デートだよ！」
といって仕事に出かけた。

昼過ぎに帰宅すると、オヤジが作ったラーメンを２人で仲良く分けて食べていた。
２人ともそこそこ幸せそうであった。

１人では難しい長時間の留守番も、２人ならきっとうまくいく。
２人は夫婦だから。
・・・オヤジが無茶をしなければ、の話だけど。