脳がみせる妄想と、私の対処法

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ドラマ『トップナイフ』が終わった。天海祐希主演の医療ドラマだ。脳外科の話なので、脳に関する病気と症状がいろいろでてくる。

うちの母も脳出血で妄想のデパート状態だったから、「あー、これウチもあったなあ」と一人で盛り上がりながらみていた。ただ「ドラマと違うなあ」と思うのは、我が家ではぜんぜん深刻にもならなかったしドラマティックにもならなかったことだ。むしろ、楽しかった思い出しかない。ごめんなさい。

もともと私は妄想に関しては免疫があった。かつて介護していた祖父のせん妄が酷かったからだ。真面目な人だったが、まるでギャグとしか思えない数々の名言を残した。
「アメリカの大統領がヘリコプターで迎えにくる」
「実は金庫に3億円隠している」
「とんでもない秘密を知ってしまった。元総理大臣の◯◯がな、お尻だしてるねん」
・・・えええ、お尻? おじーちゃん、すごい秘密知ってるな!
大笑いしている私の隣で、叔父は
「何をバカなこと言ってるんだー!」
と泣いて怒っていた。
叔父は終始つらそうだったが、おもしろいことを言う祖父が私は好きだったし、ちっともつらくなかった。同じ妄想を目の当たりにしても、受け取り方によって介護の負担はぜんぜん違うのだと思う。ちなみに、どんな妄想でも否定すると悪化するので、話題を変えて気をそらすのが一番無難。

のんきに眠るシシィさん

ということで、今回はまったく参考にならない我が家の妄想(?)ののんきな対処法をまとめてご紹介しよう。のんきすぎてイライラしちゃう方は読まないほうがいいかもです。

1)ひとの顔がわからない

・・・毎日「あんた誰?」と尋ねてくる

私の対処: 毎日「北川景子です♪」「檀れいです♪」「松嶋菜々子です♪」と美女を名乗ってみる

母の反応:最初だけは「はじめまして北川さん」って呼んでもらえてワクワクしたけど、二度目からは「なんか違う気がする」「松嶋菜々子ではないことはわかる」と断られた。残念だった。一週間くらいでこの遊びにも(私が)飽きたので、会うたびにまず自分の名前を名乗るようにした。

2)カプグラ妄想(親しい人が別人にすり替わる妄想)

・・・・「あんたニセモノでしょ!キモチワルイから触らないで!」と拒否される

私の対処:本物に依頼されたことにする

母:また来たのニセモノ!きもちわるい!
私:ごめん、バレた? 本物から頼まれてお母さんのお世話をしにきたの
母:本物はどこにいったの?
私:旅行にいってる。今ネパールだって。交通の便がわるくて帰るのが遅くなるんだって、メールきたよ。ほら「母のことをお願いします」って書いてある
母:・・・なら仕方ないねえ。

渋々だったけど、これで介護させてくれた。「本物はどこにいるの?」ときかれたとき、いろんな国を旅している設定で話すのが楽しかった。この妄想は1~2ヶ月で消えた。

3)エイリアンハンド

・・・麻痺して動かない左手を「末娘のU子(重度障害者)」だと思い込み世話をする

私の対処:ヘルパーさんにまかせる

否定は厳禁、肯定は悪化する。そのため「左手のU子」の話題はなるべく触れず、さりげなく話題を変えるようにした。母が不穏なときだけ相手をした。

母:様子がおかしいの。U子がごはんを食べないのよ(左手に箸をもっていき食べさせようとする)
私:さっきヘルパーさんがご飯食べせてくれたからお腹がいっぱいなんだよ。焼肉定食たべたって聞いたよ。だから大丈夫。
母:そうなのね。じゃあ、オムツ替えてあげなくちゃ
私:それもさっきヘルパーさんがやってくれてたよ
母:よかったー

妄想のヘルパーさんをこきつかってるうちに1年半ほどで消えた。

4)幻視

・・・現実にはいない人が見えたりする

私の対処:遊ぶ

母:あそこに女の子がいるの。
私:ごめん、見えへんわー。どこ?
母:本棚の上。
私:えええ、本棚の上て!やべえなおい!落ちる前におりてこーい!
母:あんたうるさいからどっか行ったわ

幻視はとにかくおもしろい。せっかくだから楽しむ方向で。今でもときどき見えているらしい。さっきは「アジャリ(数年前に死んだ猫)がいる」と言っていた。幻視というより霊視かも!?

5)半側空間無視

・・・モノの左側を認識できない。見えない。妄想ではないが。

私の対処:利用する

見られたらマズいもの、触ってほしくないものは左側に置いておく。母に内緒でお菓子を食べるときも左側で食べてたらバレない。これは今もバリバリ現役。

6)モノが2つあると思いこむ

・・・すべてのモノが2つセットだと思っている。何ていう妄想なのかわからないので我が家では「ダブルマジック」と呼んでいる。

ミカンを1つだけ渡すと
「もう1個は?」
ときかれたり。
お気に入りの服を
「同じ服をもう一着もっている」
と言ったり。
妹に向かって
「旦那さんは2人いるでしょう」
と言ったりする。

私の対処:べつに困らないので何もしない。ほへー、とか言うとく。

この妄想は今でもたまに出現する。
つい昨日も
「この本、もう一冊あったでしょう?」
と言い出した。
ないよと言っても信じてくれない。
「だって見たのよ。『エンドレスナイト殺人事件』2冊あったわよ」
またまた~、それは妄想だよ。
ダブルマジックだよ。

とか、思ってたら!

あったわ。
同じ本が2冊。

コロナのせいで図書館が閉まるので、たくさん借りたんだよね。慌ててたから、間違えて同じ本を2冊も借りちゃってた。妄想じゃなかった。ごめんね、おかーさん・・・。