繋がらずにはいられない

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かつて海外旅行中に日本と連絡を取ろうとしたら、手段は国際電話だけだった。初めての一人旅で公衆電話から家にかけ、母や妹の声を聞いてホームシックになったっけ。

祖父からFAXが届いたこともある。トルコの安宿に滞在中、フロントに呼び止められて
「日本からメッセージだ」
と渡された紙には、立派な毛筆で黒々と
『早く帰っていらっしゃい』
と書いてあった。祖父の字だった。すごく嬉しくて、今でもどこかに取ってあるはずだ。

インターネットが登場するとネットカフェからメールで連絡できるようになった。海外のいろんなネットカフェを訪れるのは楽しかった。日本語の使えないPCなんてザラだったから、いろいろ工夫したものだ。

Wi-Fiが普及するとPDA(小さなパソコンみたいなの)、それからiPod touchを持ち歩いた。海外ではどんな安宿でもWi-Fiがとんでいて、日本はもう先進国じゃない、むしろ遅れてるんだと気がついた。

自分のスマホを持ち歩くようになったのは最近のこと。空港や携帯電話会社で旅行者用のSIMを買い、自分のスマホに入れれば普通に使える。むちゃくちゃ便利だ。

今回の台湾旅行はとにかく時間が惜しかったから、台湾で使えるプリペイドSIMをAmazonで買っておき、関空で入れ替えておいた。お値段たったの数百円。

SIMを挿し替えるだけで使えるのだから、むちゃくちゃ便利だ。公衆電話からモシモシやってた頃に比べると便利すぎて笑えてくる。

けれど、いいことばかりじゃない。昨年はバンコク弾丸旅行を堪能している真っ最中に、職場から「利用者様の陰部洗浄について」という現実極まりないメールが届いてしまったのだった。

そこで私はあらかじめ
「11/6だけは連絡しないでください、海外なので電話も繋がりません(通話できるSIMは敢えて買わなかった)」
と、上司全員に伝えておいた。
繋がらない権利」を主張したのである。
たまの旅行くらい、いいじゃないの!

が、そうは問屋が卸さない。
6日の朝、台北から瑞芳へ向かう列車に乗ったとたん、上司からメールがきた。急ぎの内容だから仕方がないんだけど、いろいろ考えながら必死で返してるうちに目的地に着いてしまった。
車窓の風景とか楽しみにしていたのに、鉄道旅行の思い出が仕事のメールだけって…。

猫とも連絡がとれたらいいんだけどな。

便利って、あんまり、よくないな。