施設入所は親不孝じゃない

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「親を施設に入れてしまった。私は親不孝だ」
・・・そう呟いた人がいた。

政府は在宅介護を推奨しているし、世間的にも「家で暮らすのが理想」ってことになっている。「海外では施設を利用することは少なく、最期まで家で過ごす人がほとんどだ」と憧れをこめて話す。

けれど本当にそうなのだろうか?
在宅介護は最良の方法だろうか?
みんな家で暮らすべきなんだろうか?
本当に?

ちょっとニュースに目を向ければ、介護疲れによる心中や殺人事件が頻繁に起こっていることがわかる。介護放棄や虐待は、表面にあらわれないだけで、そこらじゅうに、無数に、転がっている。私はまだまだ経験の浅い介護士だが、私でさえそういうケースを目にして震える。

それは例えるなら「在宅介護崩壊」とでも呼ぶべき状態だ。「多頭飼育崩壊」の介護版。排泄物にまみれ栄養状態の悪い犬たちの姿を人間に置き換えて想像してみてほしい。

無理をすれば、そうなるんだ。
在宅介護にはある程度の体力や気力、時間的な余裕や、知識や技術が必要だ。
とにかく在宅介護すりゃいいってもんじゃない。
やみくもに在宅介護を讃えるのはどうかと思うのだ。

・・・だから。

「親を施設に入れてしまった。私は親不孝だ」
そんなふうに呟いたあなたは、親不孝なんかじゃない。
絶対にそうじゃない。
施設に入れることで、お母さんと自分を守ったんだ。
在宅介護崩壊を防いだんだ。
あなたはやるべきことをした。
あなたはひとつも悪くない。
今まで本当によく頑張った。えらかった。

「世間体が悪いから施設には入れない」という家族の言い訳にゾッとする。あと「親がいないと僕が困るから施設には入れない」系の『8050問題』。在宅介護において、家族というものは必ずしも被介護者の味方であるとは限らない。

コメント

  1. はじめまして。
    読んでいて涙が出ました。
    私がかけて欲しい言葉でした。
    ありがとうございました。

    • こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます。
      とらねこさんも、とても頑張ったのですよね。
      頑張ったご自分を労ってあげてくださいね。