わかってあげられないつらさ

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認知症のAさんは近頃よくケガをしている。あるときは頭に出血の跡があったし、またあるときは指をケガしていた。けれど、いつどこで、なぜケガをしたのか全く覚えていない。
「え、私、ケガしてる?」
指摘されるといつも驚く。ほとんど痛みを感じていないのだ。一人暮らしだから誰もケガの現場を見ていない。たぶん家の中で転んだりするのだろう。

Bさんも同じだ。今日は腕が真っ赤に腫れ上がっていた。奥様によれば、
「いつの間にか腫れていて。原因はわからない」
困ったことに本人に尋ねても言うことがコロコロ変わる。
「痛い」
「痛くない」
「痛いのはお腹」
「頭が痛い」
「虫に噛まれた」
「頭をぶつけた」
「ベッドから落ちた」
とにかく腫れているから、筋でも傷めたか、それとも骨か、と整形外科につれていくと
「感染症です。バイキンが入ったんですね」
・・・全然違った。
「病院へ連れていこうにも、何科に行けばいいんだか分からないから困るよ。難しいねえ」
奥様はため息をついた。

認知症だけじゃない。重度障害のある人も。子供も。猫も。どこが痛いのか。いつから痛いのか。どんなふうにつらいのか。それをわかってあげられない。気づいてあげられないって・・・家族にとっても、つらいことだ。