クリスマス・イブ

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サンタクロースは今頃トナカイのひくソリに乗って夜空を駆けている頃だろう。
我が家にもクリスマス・イブがやってきた。今年はお金をかけないと決めて、私が鶏肉料理をつくり、妹がケーキを焼き、手作りのごちそうを家族そろって食べた。

きよしこの夜を歌い、プレゼント交換をした。
「いいクリスマスだねえ」
母が温かいためいきをついた。
「私、退院できて本当によかった」
「そうだね。間に合ってよかった」
答えながら、想像した。母と同室だった人たちのほとんどが病室でクリスマスを過ごしているのだろうと。ずっと「痛い痛い」と繰り返していたおばあちゃんも、痰の吸引のたびに苦しそうにしていたおばあちゃんも。

クリスマスは楽しいものだ。明るい愛にあふれた聖なる夜だ。だからこそ悲しみや寂しさや深い闇がきわだつ夜でもある。

同じ夜の下で、痛みや苦しみと戦っている人がいる。ケーキどころか満足な食事すらできず震えている人もいる。眠ることも許されず「サンタさん助けてください」と星空に祈る人もいる。同じ夜の下に苦しんでいる人たちがたくさんたくさんいる。・・・かつては私もその一人だったし、いつ何時、またそうなるかもわからない。だからこそ、聖なる夜に、少しでも多くの救いがもたらされますようにと奇跡を祈る。

階下から子供の泣き声が聞こえてきた。
「こんな悪い子にはサンタさん来ないよ!」
と叱られた龍ちゃんが泣いているのだ。
「だいじょうぶ。サンタさん来るよ」
誰かがなだめている。
世界中の子供たちのもとにサンタクロースが来ますように。

コメント

  1. 楽しそうに笑う人の横で、絶望を抱えて歩く人がいる。
    人の世って、そうですよね。

    • そうですね。
      だからこそ聖なる夜はより多くの救いが必要だと思うのです…。

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