10才になりました

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それは10年前、2008年のゴールデンウィークのことだった。

野良の子猫を初めてみつけたのは、母だった。
「玄関をあけたところにいて、
顔をみるなり『ニャー!』って偉そうに言うのよ」
どうやら
「ゴハンをくれ!」
とせがんでいたらしい。
母がキャットフードをあげたが、食べる様子がない。
体も小さかったし、乳離れしてまもない子猫なんだろうと思って牛乳を与えたら、ガツガツとむさぼるように飲んだという。

小さくて、ガリガリで。
汚れた毛のかたまりみたいな、典型的な野良猫。
警戒心をむき出しにして、子猫のくせに目がぎらぎらと怖い顔をしていた。
人間なんか、大嫌いだ。
ゴハンをやりにいってもシューシュー唸るばっかりで近づけない。

うちの飼い猫のアジャリは、貧相な声でなく子猫を迷惑そうな目で見ていたが、追い出すようなことはしなかった。
ゴハンをもらえることが分ったのか、逃げ出す気力もなかったのか。
野良の子猫はそのまま庭に棲みついた。

変化は数日で起きた。
みすぼらしい毛皮にだんだん肉がついてきた。
そうすると思ったほど赤ちゃんではないことが判明した。
顔つきも穏やかになって、
「可愛くなってきたよ!」
と母の言うとおり、子猫らしい、くりくりとした無邪気な目を見せるようになった。
人間は食べ物をくれる存在であると理解して、
「ゴハンちょうだい」
とちょっと可愛い声でせがむようになった。
・・・だけど近づくと唸られた。

ある夜、子猫を家に入れてみることにした。
天気予報が大雨を告げていたからだ。
けれど
「入りなさい」
と人間が呼んでも、絶対、来ない。
そこでアジャリの出番なのだ。
「ちょっとあの子を呼んできて」
と頼むと、アジャリは扉からすっと顔をだし、子猫と顔をつきあわせて何事か目で語りあっていた。
そのあとアジャリが家の中に戻ると、子猫も後をついてとっとっと入ってくるではないか。
「アジャリ、賢いぞ、おまえ!」
五月雨の日。
台風の夜。
子猫はアジャリに呼ばれて家の中で過ごした。
子猫らしい好奇心で家のなかを探検しまくりで母が困っていた。

はじめて家に入ってきた子猫。手前の猫がアジャリ

家に入れたんだから、この子は「ウチの子」になるんだ。

私たちは子猫を「サン」と名づけた。

サンは野良猫だけど、まだ子供だから、人間に慣れるのは早かった。
ただし、触るのは、ダメ。
絶対に、ダメ。
人間の手が、指が、極端に怖いらしい。
一度だけほんのちょっと触れてみたところ、火傷をしたように飛び上がり、怒りと恐怖のいりまじった大声をあげて逃げだした。見ていて痛々しいほどだった。
・・・よっぽど酷いめに遭ったんだろう。

本当は早くさわりたい。
頭と背中をなでてやって、
お腹をふもふしてやって、
喉の下や耳をかいてやって、
そして動物病院に連れていきたい!

だっては鼻水をたらしているのである。
すごいクシャミをするのである。
時どき目ヤニも出している。
どうみても、病気だ。
獣医さんに相談したら
「時が解決してくれる。
いつか慣れてくれるから、無理に捕まえたりしないように。」
と釘を刺された。
食欲があって毛並みがキレイなら、病気もまだまだ大丈夫だからと。

ちょっとずつ。
ちょっとずつ。
慣れてきてはいる。
昨夜、間違えて耳の下に触れてしまったのだけど、
まるで熱いものに触れたように飛び上がったものの、
唸らずにすぐにお皿のところに戻ってきた。
今朝などは、アジャリにすり寄ろうとしてそばにいた私にまでスリスリした。
そのあとで
「あっ間違えた!」
てな顔をしていたけれど。
・・・私に触れてくれた。
それがすごく嬉しかったのだ。

いつになったら抱かせてもらえるのかは分らないけれど。
いつか。
いつかは。
仲良くなれる。
サンジと私達との物語は始まったばかりだ。

(2008年5月の日記より)

 

怯え、怖がり、触られることを嫌がった子猫。近づきたい。愛されたい。でも怖くて怖くてたまらない。そんな子猫に
「大丈夫だよ。怖くないよ」
と、先住猫のアジャリが教えてくれた。

初めて抱かせてくれたとき、サンジはこんな顔をしていた。

まだちょっと警戒してる

この瞬間、サンジは人間を「信じる」ことに決めたのだ。心の鍵がはずれ、固い結び目がほどけていくのが見えるようだった。人間に触られても抱かれても大丈夫だと、サンジは知ったのだ。

キツくつりあがった目をした子猫は、安心を得たことで、柔らかい表情になった。

爆睡

そして10年後の、現在。

10年前より幼い顔です

あんなにも触れられることを恐れていた子猫は、とてつもない甘えん坊で、抱っこが大好きになった。なでて、なでて、とせがんでくる。ごろごろ、ごろごろ、ごろごろ、ずーっと喉をならしてる。甘えん坊のサンジをみていると幸せな気持ちになる。こんなにも信じてくれているんだなあと嬉しくなる。

サンジ、うちの子になってくれてありがとう。
家族になってくれてありがとう。

お誕生日おめでとう。

コメント

  1. サンジさん、お誕生日おめでとうございます。だださん家の家族になってくれてありがとうございます。私もいつもあなたに癒されてます!

    • 「ありがとうございますにゃん!
      だだがもっと僕と遊んでくれるように、あきさんからも言っといてくださいにゃん!」
      ・・・とのことです。

  2. だださん、お久しぶりです。
    &サンジくん、お誕生日おめでとう!!
    あれからもう10年経ったんですね。

    これからもだださんのブログ楽しみにしています♪

    • おお、サンジ好きさんお久しぶりです!

      サンジより、
      「にゃんにゃん、ありがとうございます!
      これからも僕がこのブログの主役ですからよろしくにゃん!」
      ・・・とのことです。

  3. お誕生日おめでとうございます。
    もののけ姫の名前の予定だったけど、男の子だったので海賊団の仲間の名前になった…と記憶しています。
    名付けのいきさつのだださまの文章がとっても面白くって! 
    違っていたらごめんなさい。
    その頃から、ずっと拝読しています。
    宝塚ブログも旅ブログも介護ブログも…

    • ありがとうございます!
      そうなんですよ、ついてるのが発見されて闘うコックさんになったのでした。
      長い年月、いろいろな文章を読んでいただいて本当にありがとうございます。
      これからもよろしくお願いします。

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